129: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 18:56:12.22 ID:AfpWDvGb0
再びひとりきりになった控室で、私はふらふらと鏡の前に立った。
辛気くさいと、暗いと言われ続けてきた真っ白い顔が、私を見返していた。
なるほど、これは辛気くさいと言われても仕方ない。まるで死人のような顔色だった。
鏡の中の自分が、これは全てお前のせいだと言っているように思えた。
夕美さんがケガをしたのも、
ふたりの到着が遅れたのも、
……周子さんが倒れたのも、
私が社内オーディションで選ばれなければ、
私が346プロダクションに入らなければ、
私がアイドルになろうなんて思わなければ、
ちがう、と心の中でつぶやく。
鏡の中の私が、あざ笑うような表情を浮かべた。
だってあなた言ったじゃない。
私は人を不幸にするって。
呪われてるって。
アイドルになんて、なっちゃいけないって。
プロデューサーさんにスカウトされて嬉しかった?
大手のプロダクションなら平気だって思った?
人を幸せにしたいなんて言いながら、どれだけの人を不幸にした?
鏡に映った唇が、ゆっくりと動いて、言葉の形を作る。
『あなたさえいなければ』
――うるさい黙れ。
ぴしっと乾いた音がして、鏡に大きな亀裂が走る。
映った私の顔を斜めに切り裂いたヒビは、またたく間に蜘蛛の巣状に広がっていき、鏡は無数の破片となってバラバラと床に落ちた。
次いで、部屋中の蛍光灯が爆発するように砕け散った。
暗闇に包まれた部屋に、自分の荒い呼吸音だけが響いていた。
202Res/248.44 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20