147:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:19:51.30 ID:A6rjc17z0
事務員さんが指を差す先には、資料を片手にスタッフさん達と忙しそうに言葉を交わしている、帽子姿の男性がいました。
「はい」
「それと、例のモノは、いつ渡すんだい?」
148:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:22:31.29 ID:A6rjc17z0
責任者さんにご挨拶と、今日の進行を再度確認しました。
雨が降る予定だったので、急遽テントを増設して、待機場所を変更したのだそうです。
それから、音声のスタッフさんに今日の音源を渡して――。
えぇと、確かこの辺に――。
149:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:25:48.76 ID:A6rjc17z0
「なぁ、知ってます? 今日台風が来るんだってよ、台風。
ちょうどフェスが始まる頃に首都圏上陸ってな」
ハハハ、と無遠慮に笑い飛ばしながら、その場に立ち尽くす私の横をゆっくりと通り過ぎていきます。
150:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:27:55.00 ID:A6rjc17z0
「いい加減にしてください」
とうとう、我慢できなくなってしまいました。
気づかぬ内に、拳を握りしめています。
151:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:31:03.88 ID:A6rjc17z0
「あんたは?」
「失礼……申し遅れました」
胸元から名刺入れを取り出し、一枚引き出しました。
「こういう者です。本日は、私がプロデュースするアイドルも出場致します」
152:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:33:11.57 ID:A6rjc17z0
「……すみません、ありがとうございました」
改めて、私は頭を下げました。
まさか、346プロの方が私を――いいえ、ほたるちゃんをかばってくださるなんて。
153:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:42:57.88 ID:A6rjc17z0
「お互い、頑張りましょう。では、失礼致します」
最後にもう一度、軽くお辞儀をして、その人はステージの方に歩いて行きました。
154:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:45:30.76 ID:A6rjc17z0
「ほたるちゃん……」
今日の――いいえ、会場に着いてからのほたるちゃんは、まるで別人のようです。
いつもはハの字になっている細い眉をキュッとさせて、口を固く結び、何よりもその目。
155:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:48:52.19 ID:A6rjc17z0
気づくと、空は真っ黒な雲に覆われ、時折遠くでゴロゴロと音が聞こえます。
プロデューサーさんが、ほたるちゃんを出演者用のテントへ案内しました。
皆さんの後ろを歩きながら、おもむろに私はバッグを漁ります。
そろそろ――。
156:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 23:52:02.71 ID:A6rjc17z0
可能性として考えられるシーンは、ただ一つ。
少し前、スタッフさんに渡す音源のCDを出そうとバッグを漁りながら――。
――キャッ!? うわ、す、すみま…
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