【デレマス】デレP「宝石になった日」
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5: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:21:33.42 ID:3cTkaN/s0
「ああもう、なんでみんなアタシをからかうんだ……ほら、テキスト終わったから採点してよ」

「どれどれ……うん、ちゃんと理解できてるみたいだね」

「うっし!」
以下略 AAS



6: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:22:21.11 ID:3cTkaN/s0
 コンビニに寄ってアパートに帰り、母からのメールを確認してテレビをつける。

「え……えー……今ナナは、高度何千メートルかの飛行機の中にいます! あれ、何百メートル……? もう、よくわかりませんけども!」

 おそらくは、バラエティの企画なのだろう。テレビ画面では、自称宇宙人が飛行機の中で浮いていた。
以下略 AAS



7: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:23:29.20 ID:3cTkaN/s0
 姉さんのことを、嫌っていたわけではない。ただ、少しずつ疎遠になっていってしまっただけ。
 お互いに進学し社会人になると、忙しくなったこともあり頻繁に連絡を取り合うこともなくなっていった。両親に連絡を取る時に、姉さんの近況を母さんから聞かされるくらい……「夢に向かって頑張ってるらしいわよ」と。
 姉の夢。幼い頃からずっと変わっていない……アイドルになること。
 母さんはずっと応援し、小まめに連絡をしていたというけれど、心配していただろうことは想像に難くない。僕にだって孫の話が飛んでくるのだから、姉さんのところにだって見合い話の一つや二つは持っていっているはずだ。
 僕も、おそらく父さんも。きっと適当なところで諦めがついて、就職なり結婚なりをするのだろうと想像していた。壁にぶち当たって限界に気づくのは、時間の問題だろう、と。
以下略 AAS



8: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:24:26.83 ID:3cTkaN/s0
 外ではお酒が飲めないから、という理由で、会う場所はあっさりと僕の自宅に決まった。今日もアニメの収録があるのだという姉さんを、最寄り駅前のロータリーで待つ。
 最後に会ったのは、確かいとこの結婚式だっただろうか。「菜々ちゃんは今をしているの?」という親戚からの質問に、父さんが答えに窮していたのが印象に残っている。
 あの時姉さんは、なんと答えたのだったか。少なくとも、アイドル志望とかではなかった。なにか取り繕った嘘をついて、少し寂しそうに笑っていたはずだ。
 後ろめたさからくるのだろう、姉さんが嘘をつくときの癖。両親に怒られる僕を庇う時も、先輩に他に好きな人がいると言った時も、姉さんは同じように曖昧な笑みを浮かべていた。それが痛々しく思えて、僕は嘘をつくまいと思いながら成長していった。
 嘘をつくのが下手だった姉さん。それでも、ウサミン星人、なんてわかりやすい嘘を公言してテレビに出ている辺り、嘘をごまかすのは多少うまくなったのかもしれない。
以下略 AAS



9: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:24:59.89 ID:3cTkaN/s0
 進行方向を指さし、道中スーパーに立ち寄る。自炊はするとはいえ大したものは作れないから、今日の夕飯は姉さんに一任することにした。カートにカゴを置きキャベツの葉の密度を見比べるその姿は、十七歳のアイドルだと言われてもあまり実感が湧かない。

「普段からちゃんと食べてますか? 半額のお惣菜ばっかり買ってません?」

「心配しなくても食べてるよ。米も買ってるし野菜ジュースも飲んでるし」
以下略 AAS



10: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:25:49.12 ID:3cTkaN/s0
 自分の部屋の掃除はできないくせに、職場や他人の部屋の掃除はやたらとしたがる姉さんの性格を完全に忘れていた僕は。結局母さんがアパートを訪ねてきた時のように、姉さんに小言を言われながら部屋の大掃除をすることになった。
 食事を終え、姉さんを送るためにアパートを出る頃には、夜はどっぷりと更けていた。

「えへへー、お姉さんの料理はおいしかったですかあ?」

以下略 AAS



11: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:26:52.50 ID:3cTkaN/s0
「母さんたちは、もう覚えてないかもしれないけどね。ウサミンは、子どもの頃にアニメを見てた生み出した、私の初めてのオリジナルアイドルなの。ずーっと憧れていた、十七歳の魔法少女……だからアイドルになろうって思ったときに、ウサミンになるって決めたんだ」

 それが、ウサミン星から来た宇宙人を名乗る理由。永遠の十七歳を、自称する理由。
 
「もう後戻りできない。何をしたって後悔することになるなら……やりたいことを、やりたいだけやっちゃおう、って。ウサミンのことを笑う人がたくさんいたとしても……私と一緒に同じ景色を見て、楽しんでくれる人がいたら。ファンがウサミンを見て楽しんでくれたら、きっとすごく幸せだから」
以下略 AAS



12: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:27:56.79 ID:3cTkaN/s0
 振り返った姉さんは、月明りの中で、その逆光の中でもはっきりとわかるほどに。
 
「……楽しいよぉ。だって、夢が叶ってるんだもん」

 いつかの日に見たように、幸せそうな満面の笑みを浮かべた。
以下略 AAS



13: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:28:25.16 ID:3cTkaN/s0
 職員室に出版社から郵便物が届き。
 安部菜々の熱愛報道として僕と姉さんのツーショット写真が世に出回るのは、それから二週間後のことだった。


14: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:29:38.29 ID:3cTkaN/s0
 実家から取り寄せたアルバムを見せることで、職員室やら教育委員会やらには納得してもらえたけれど、世間様相手にはそういうわけにもいかないようだった。
 まあ、アルバムの件で電話した時、モザイクのかかっていた成人男性を本気で姉さんの彼氏だと思っていた母さんに「それは僕だよ」と説明するときも、中々骨は折れたのだけれど。
 本来はどうあれ、「永遠の十七歳の現役JK」として売り出している以上、条例だったり契約関係だったり、いろいろと問題は出てくるのだろう。
 対策を考えたい、と姉の事務所から連絡があったのが、週刊誌発売日の前日。一昨日のことになる。
 呼び出された事務所を訪ねオフィスに通されると、スーツを着た男性の隣で、姉さんはその小さい身体をさらに縮ませて座っていた。
以下略 AAS



15: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:30:42.91 ID:3cTkaN/s0
「……すみません。てっきり年上なのだと」

「いいんですよ、昔っからよく間違えられていましたから。中学の頃から変わらない上にあの性格なもんだから、高校の時なんかは妹に世話を焼かせるダメ兄呼ばわりされたものです」

 促されて、僕はソファの対面に腰かける。おそらくは秘書かなにかなのだろう、蛍光色のスーツを着た女性が紅茶をテーブルに用意してくれた。
以下略 AAS



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