9: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:24:59.89 ID:3cTkaN/s0
進行方向を指さし、道中スーパーに立ち寄る。自炊はするとはいえ大したものは作れないから、今日の夕飯は姉さんに一任することにした。カートにカゴを置きキャベツの葉の密度を見比べるその姿は、十七歳のアイドルだと言われてもあまり実感が湧かない。
「普段からちゃんと食べてますか? 半額のお惣菜ばっかり買ってません?」
「心配しなくても食べてるよ。米も買ってるし野菜ジュースも飲んでるし」
「ジュースじゃあ野菜を食べてるとは言いません。彼女に作ってもらったりとかしないんですか?」
ずっとそんな調子なものだから、缶ビールをカゴに入れながら僕は思わず吹き出してしまった。
「母さんみたいなこと言うんだなあ……悪いけどしばらくは独身貴族だよ」
未だにコンビニで年齢確認されてしまうという姉さんに代わって、レジを通って会計をする。
「姉さんはどうなのさ。恋人とか」
「え」
エコバッグに豚バラ肉を入れたまま、姉さんは硬直した。
「い、いないよぉ恋人なんて……アイドルとしては、まだまだ駆け出しだし……ほら、今はお仕事が恋人、っていうか」
そう言って笑いながら、姉さんは袋詰めを再開した。
無理に作ったような、笑みを張り付けたまま。
……本当に、変わらないな。
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