10: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:25:49.12 ID:3cTkaN/s0
自分の部屋の掃除はできないくせに、職場や他人の部屋の掃除はやたらとしたがる姉さんの性格を完全に忘れていた僕は。結局母さんがアパートを訪ねてきた時のように、姉さんに小言を言われながら部屋の大掃除をすることになった。
食事を終え、姉さんを送るためにアパートを出る頃には、夜はどっぷりと更けていた。
「えへへー、お姉さんの料理はおいしかったですかあ?」
「ああ、おいしかったよ」
ほろ酔い気味で気持ちよさそうな姉さんは、夜風に当たりながら僕の手前を歩いていく。
「なあ、姉さん」
「はぁい?」
そんな気分の良さそうな姉さんに聞いてしまっていいものか迷って、僕は口を開く。
「なんで、ウサミン星人なのさ」
どうしても、気になったこと。
世間一般の姉に対する評価は「属性盛りすぎ」「一昔前の電波系みたい」「ちょっと痛いけど面白い人」などが主流のようだった。実際、身内から見てもそれは否定できない。アイドルという仕事を否定する気はないけれど、姉さんのアイドル像はおそらく、その業界の中でも異端なのだろう。
だから、なぜ、と。
「声優に……アイドルになるだけなら、他に方法はあっただろ。痛々しいって後ろ指さされて、笑われ者になって、俺よりも年下なんてことになって、数年後どうなってるかも分からない。それなのに」
「うーん……」
姉さんは立ち止まり、口元に手を当ててしばらく考え込む。そうして顔を上げると、天に向かって指をさした。
「あそこに、ウサミン星があるから……かなあ」
姉さんの指の先には、満月が浮かんでいた。
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