11: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:26:52.50 ID:3cTkaN/s0
「母さんたちは、もう覚えてないかもしれないけどね。ウサミンは、子どもの頃にアニメを見てた生み出した、私の初めてのオリジナルアイドルなの。ずーっと憧れていた、十七歳の魔法少女……だからアイドルになろうって思ったときに、ウサミンになるって決めたんだ」
それが、ウサミン星から来た宇宙人を名乗る理由。永遠の十七歳を、自称する理由。
「もう後戻りできない。何をしたって後悔することになるなら……やりたいことを、やりたいだけやっちゃおう、って。ウサミンのことを笑う人がたくさんいたとしても……私と一緒に同じ景色を見て、楽しんでくれる人がいたら。ファンがウサミンを見て楽しんでくれたら、きっとすごく幸せだから」
そうして、その想いを抱いたまま姉さんは大人になり。
子どもの頃見たヒロインが、少女から大人の女性に変身したように。姉さんは、アイドルとして十七歳の宇宙人に変身しているのだという。
「最初は、心細かったけど……今はライブでも、ウサミンコールをしてくれる人も増えててね。見つけてくれたプロデューサーさんには、感謝してもしきれないくらい……」
アルコールで開放的になったらしい姉さんは、頬を赤らめながらそう言って笑った。
夜空なんて、見上げなくなってどれだけ経っただろう。
都会は星が見えない、なんて言う人もいるけれど。それでも月は確かに、僕らの頭上で輝いていた。
月明りが眩しくて、僕には見えないけれど。
あの丸い月の裏側に、姉さんの星は確かにあるのだという。
その場所を指さして笑う姉さんの姿が、あまりに眩しかったものだから。
「姉さん」
「んー、なぁに?」
「アイドル、楽しいかい?」
気がつけば僕は、神谷にしたのと同じ質問をしていた。
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