14: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:29:38.29 ID:3cTkaN/s0
実家から取り寄せたアルバムを見せることで、職員室やら教育委員会やらには納得してもらえたけれど、世間様相手にはそういうわけにもいかないようだった。
まあ、アルバムの件で電話した時、モザイクのかかっていた成人男性を本気で姉さんの彼氏だと思っていた母さんに「それは僕だよ」と説明するときも、中々骨は折れたのだけれど。
本来はどうあれ、「永遠の十七歳の現役JK」として売り出している以上、条例だったり契約関係だったり、いろいろと問題は出てくるのだろう。
対策を考えたい、と姉の事務所から連絡があったのが、週刊誌発売日の前日。一昨日のことになる。
呼び出された事務所を訪ねオフィスに通されると、スーツを着た男性の隣で、姉さんはその小さい身体をさらに縮ませて座っていた。
「どうも、初めまして」
立ち上がった男性が、名刺を差し出してくる。交換した名刺には、安部菜々担当プロデューサー、という肩書が記されていた。
つまりはこの人が、姉さんをアイドルの世界に引っ張り上げた人。あまり業界人、という雰囲気はないけれど、こうやって個別のオフィスが用意されている辺り、それなりにやり手なのだろう。
さっそく話を始めようとして……それで僕はようやく、姉さんの発する雰囲気の原因に思い当たった。
「ええと……彼女からは、僕のことはなんと紹介されていますか?」
びくり、と姉さんの体が跳ねる。つまり、何も説明していない、ということか。大方姉さんのことだ、この人相手にも永遠の十七歳で通したものだから、いきなり「あれは弟です」なんて言い出せなかったのだろう。
「まあ、ご覧の通りで。ですが、名刺のお名前を拝見して大体の事情は分かりました」
「……念のため言っておきますが、婚姻関係ではありませんよ」
「そこまで節穴じゃあありませんよ、お兄さん」
……いつも通りの反応ではあったので、僕はそれに愛想笑いを返した。目配せをして、姉さんの前にしゃがみこむ。
「ごめんなさい……巻き込んじゃったね」
「気にしなくていいよ、姉さん。少し彼と二人で話したいんだけど、大丈夫かい?」
憔悴している様子だったけれど、姉さんはおそらく無理に笑顔を作った。プロデューサーと二言三言言葉を交わすと、オフィスの外へと去っていった。
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