5: ◆ANRdHn0Tts[saga]
2018/04/17(火) 08:21:33.42 ID:3cTkaN/s0
「ああもう、なんでみんなアタシをからかうんだ……ほら、テキスト終わったから採点してよ」
「どれどれ……うん、ちゃんと理解できてるみたいだね」
「うっし!」
顔を綻ばせて、神谷は小さくガッツポーズをした。時計を確認してそわそわする神谷に、僕は来週の宿題となるプリントを渡し、テキストをカバンに仕舞うように促した。
「今日も、これからレッスンかい?」
「うん。今日はさ、ユニットを組むメンバーと初顔合わせなんだ!」
本当に、ころころと表情の変わる子だ。感情を素直に表現できる彼女なら、きっとすぐに人気者になれるだろう。
「なあ、神谷」
「んー?」
だから……下校しようと大きく伸びをした彼女を呼び止め、そんな質問をしたのは、懐かしい人のことを思い出したからなのだと、思う。
「アイドルってのは、楽しいか?」
一瞬きょとん、とした後。神谷は、そんなの決まってるだろ、とでも言いたげに。
「うん……すっごい楽しいよ!」
満面の笑みを浮かべながら、教室を去っていった。
夕暮れの教室に一人きり。
遠くで鳴るトランペットのチューニング音を聞きながら、僕は姉のことを思い出していた。
気がつけば、ずっと遠い存在になってしまった、姉のことを。
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