53: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:19:46.13 ID:X17K8DuQ0
「……アタシは、絶対にアイドルになりたいの」
もう一度、想いを確かめるかのように忍は呟く。
54: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:21:03.31 ID:X17K8DuQ0
僕の身体はもう動かなかった。思考もほとんど止まっていた。
忍の身体がもう一度僕の横をすり抜けていこうとする。
55: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:22:21.21 ID:X17K8DuQ0
音楽室を何一つ見逃さないようにゆっくりと見渡す。
忍が作った広いスペースの跡、アコースティックギター、マイク、アンプ、ノートパソコン。
そこにはいつも通りの光景があった。
56: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:23:40.29 ID:X17K8DuQ0
3、2、1。
ボディでリズムを取って、震える指で最初の弦を揺らした。
シンプルなギターのリフを丁寧に弾いていく。
57: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:24:22.24 ID:X17K8DuQ0
残響が消えて、僕はできることをやったという実感があった。
ただ、これを確かな言葉と一緒に渡さないと何も始まらない。
58: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:24:50.24 ID:X17K8DuQ0
転ばないように、でも、できるだけ速く。
ここから一番近い駅へと息を切らして走る。
59: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:26:09.52 ID:X17K8DuQ0
ちょうど電車が入ってくるのが遠くに霞んで見える。
もう時間がない。間に合わなかったときのことなんて考えたくない。
60: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:27:15.87 ID:X17K8DuQ0
『さっき録ったから、電車の中で聞いてくれよ』
たったそれだけの言葉を、僕も言えずにいた。
61: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:28:08.89 ID:X17K8DuQ0
「……いつでも待ってるから」
その言葉は、祈りのように、静かに響いた。
62: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:28:56.70 ID:X17K8DuQ0
電車の発車音。
改札口を出て、賑わいだした街へと歩みを向ける。
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