工藤忍「おかしなうさぎは夢見て跳ねる」
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61: ◆tues0FtkhQ[saga]
2018/03/31(土) 12:28:08.89 ID:X17K8DuQ0


「……いつでも待ってるから」

 その言葉は、祈りのように、静かに響いた。
 これまでもそうであったように、せめて今の僕にできることを伝えたくて。
 不器用だけど心をこめた言葉は、そっと僕の手を離れる。

「……」

 ゆっくりとした沈黙の後、響くベルがおわりとはじまりを告げる。
 忍だけの扉が、ずっと追いかけてきた光の向こう側が開く。

「……うんっ」

 俯いたままだった忍は、顔を上げて、精一杯の笑顔を見せた。
 嬉しくて泣くのか、悲しくて笑うのか、声を少しだけ震わせて。
 溢れだしそうな僕の想いの欠片は、忍に正しく伝わったんじゃないかと信じることができた。

 繋いでいた手をゆっくりと離す。
 忍が振り返って、一歩目を踏み出す。
 もう手も振らない。振り返ることもしない。


 僕は背中でドアの閉まる音を聞いた。


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