152:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:27:33.05 ID:xutan3/t0
「練習はたくさんしたけど、本番は本番だから……ね?」
「うん」
153:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:28:46.93 ID:xutan3/t0
「なに?」
「緊張。少しでも取れたらいいと思って」
154:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:29:34.36 ID:xutan3/t0
「わたしの周りの人はみんなやさしいし、すごく恵まれてるのもわかってる。
学校に行けば話しかけてくれる友達がいて、家に帰れば気に掛けてくれる家族がいて……でも、それでもわたしはわからなかった」
「……なにを?」
155:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:30:34.47 ID:xutan3/t0
「そんな毎日のなかで一番つらい時間は、夜にベッドに横になって真っ暗な天井を見上げて、
今日のわたしは上手くできてたかな、誰にも迷惑かけてないかな、ちゃんと笑顔を作れてたかな、って一日を振り返る時だった」
「……うん」
156:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:31:13.95 ID:xutan3/t0
「……お兄ちゃん。あのときわたしが言ったこと、覚えてる?」
訥々と続けてきた言葉を止め、彼女は小さく首をかしげる。
ほのかな微笑は強がっているのだろう、手にかかる力がほんの少し強くなる。
157:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:32:02.24 ID:xutan3/t0
「じゃあ、お願いも……覚えてる?」
「うん。……覚えてるよ」
158:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:32:54.09 ID:xutan3/t0
──もし、わたしが"みー"に追いついたらさ。
自分の言ったことは何一つとして覚えていない。
気の利いたことを言ったかもしれない。言わなかったかもしれない。
159:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:33:56.17 ID:xutan3/t0
「わたし、もう言えるよ。お兄ちゃんに言いたかったこと、ちゃんと言えるよ」
「……」
160:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:35:12.52 ID:xutan3/t0
まだ話をしたい気持ちもなくはなかったけれど、さすがにもう遅いし寝ようと、
文化祭やあれこれについて二、三やり取りをしてから室内に戻ることにした。
話しているうちに自然と奈雨の手のひらは上を向いていて、しっかり俺の手をとらえていた。
161:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:36:15.50 ID:xutan3/t0
「奈雨が悪いだけだと思うよ」
「なにしても基本起きないし」
162:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:36:43.88 ID:xutan3/t0
「横向きで何かを抱いて寝る人が一番すごいんだってさ」
「あ、そう」
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