156:名無しNIPPER[saga]
2018/05/29(火) 01:31:13.95 ID:xutan3/t0
「……お兄ちゃん。あのときわたしが言ったこと、覚えてる?」
訥々と続けてきた言葉を止め、彼女は小さく首をかしげる。
ほのかな微笑は強がっているのだろう、手にかかる力がほんの少し強くなる。
「こんなふうに二人で夜に話したことだよな」
「……うん。そうだよ」
彼女からの返答に安堵のようなものを感じつつも、一呼吸置いて、
「覚えてるよ」
と口にした。
あのとき──俺が、奈雨の家に泊まったときのこと。
彼女の様子は思っていたよりも普通だった。
それこそ、学校に行けなくなってしまったとは信じられないくらいに。
ただ、今の話を聞くと一つ合点がいくことがある。
夜になって、奈雨は俺に『一緒に寝てほしい』とお願いをしてきたはずだ。
今にも泣き出してしまいそうな表情で俺の寝ていた部屋に来て、
怖い夢でも見たの? と訊ねたら、ただ曖昧に頷くだけで、何も答えてはくれなくて。
341Res/257.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20