31:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:37:17.70 ID:QxgIwWOp0
「いいじゃないか、アイドル。自分からアイドルになりたくてもアイドルになれない子もいっぱいいるのに。
それに乃々ちゃんは少し人見知りなところがあるから、改善のためにもアイドルやってみたらどうだ?」
二人の大人は私の顔を見ました。
32:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:38:48.48 ID:QxgIwWOp0
私はこうしてアイドルとしてスカウトされました。
これは今でも確信をもって言えることなのですが、私はアイドルになりたかったわけではありません。
33:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:00:44.45 ID:QxgIwWOp0
それからはとんとん拍子で話が決まっていきました。
私は一人、今まで住んでいた名古屋の街を離れ、東京へと向かうことになりました。
私がアイドルになると告げると、母は喜び、クラスメイト達は悲しみました。
34:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:03:29.78 ID:QxgIwWOp0
部屋へと戻り、荷物の確認をしているとチャイムがなり、母が私を呼びました。
私はポエムを書き綴ったノートなど、どうしても人に見せられない物の最終確認をしてから下りていきました。
リビングではプロデューサーさんと母が話をしていて、
35:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:05:12.89 ID:QxgIwWOp0
「乃々、これを持っていきなさい」
母は笑って、私の頭を撫でると、エプロンのポケットの中からラッピングされた袋を取り出し、私に渡しました。丁寧に包装を解いてみると、そこにはシンプルな水色のピアスが入っていました。
36:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:08:01.48 ID:QxgIwWOp0
私とプロデューサーさんは二人並んで、駅へと歩き始めました。
夏休みだからか人通りが多く、たくさんの人とすれ違いました。
すれ違う人々は私自身ではなく、私とプロデューサーさん、
37:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:09:41.09 ID:QxgIwWOp0
母から貰ったピアス。
私自身へと向けられる視線を少し吸収してくれるピアス。
窓ガラスに映る自分の姿を見てみると、
38:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:27:43.63 ID:QxgIwWOp0
東京という街は人の多い街でした。
ホームに降りてから見渡す限りの、ひと。ひと。ひと。
私はこんな街でこれから過ごしていけるのかと、すぐさまアイドルになったことを後悔しました。
39:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:30:57.24 ID:QxgIwWOp0
「じゃあまた明日、事務所でな」
タクシーが寮へと着くと、
プロデューサーさんは私の荷物をトランクから玄関まで軽々と運び、事務所の方へと歩いて行きました。
40:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:32:02.07 ID:QxgIwWOp0
整理をしながら、それでも私は、
東京の街に来たことを、一人で寮暮らしを始めたことを、まだ楽しみに感じていました。
母の目もなければ、クラスメイトの目もありません。
41:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 20:34:01.13 ID:QxgIwWOp0
また、東京で私を知っている人なんて、それこそプロデューサーさんくらいでした。
ですから、仕事の予定が入っている日以外は、部屋に引きこもり、漫画や本を読んで暮らしていよう。
そう決心し、整理を終えると、私は早速ベッドの上で漫画を読み始めました。
166Res/111.77 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20