12:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:54:41.52 ID:QxgIwWOp0
中学一年の冬でした。空には鈍色が広がっていました。体育の授業でした。
体育館は他のクラスが使っているということで、私たちのクラスはマラソンになりました。
冷たい風が肌に突き刺さるこの時期に、殺風景なグラウンドを走りたいと思うのはよっぽどの少数派で、
13:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:58:30.00 ID:QxgIwWOp0
「今言ったの森久保さん?」
声をかけられ、しまった、と振り返ると、
クラスメイトの一人が驚いたように、私を見ていました。
私が吐きだした言葉はどうやら思っていたよりも大きかったようでした。
14:名無しNIPPER
2018/01/23(火) 19:00:16.73 ID:QxgIwWOp0
しかし、私の絶望のような思いとは裏腹に、
「森久保さんって実は面白い人だったんだね」
15:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:02:27.13 ID:QxgIwWOp0
みんなが私を見て笑っている。
それは、常に私が怯えている感覚と、
文字だけで見れば違いはありませんが、そこには確かに違いがありました。
16:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:03:55.22 ID:QxgIwWOp0
それから私はひねくれキャラを演じるようになりました。クラスメイトたちは私のことを大変気にいってくれました。
「乃々ちゃんは面白いね」
17:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:05:25.91 ID:QxgIwWOp0
ですが、私の森久保は、
他者に対する万能のアイテムではありませんでした。
先ほども書きましたが、この森久保はキャラであり、仮面でした。
18:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:11:31.64 ID:QxgIwWOp0
私と森久保の日々に転機が訪れたのは私が十四歳になったときの夏休みでした。
私は夏の照り付ける日差しがどうも苦手、という体にして、
特に外出することもなく部屋に引きこもり、本を読んで過ごしていました。
19:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:14:29.13 ID:QxgIwWOp0
叔父は私に、自身が雑誌の編集者をやっていること、
今回の撮影で子役を用意していたのだが、その子が風邪で倒れてしまい、私に代役を頼みに来たことを伝えました。
私はすぐさま首を振りました。
20:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:17:28.36 ID:QxgIwWOp0
「そうかぁ。どうしてもだめかぁ」
叔父はがっくりとため息を吐きました。
叔父のその姿を見て、私は、何も悪いことをしていない、無理なものを無理と言っただけなのに、
21:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 19:18:33.48 ID:QxgIwWOp0
「乃々? おじさんもこんなに頼んでいるんだから協力してあげたら?」
横で母が言いました。母は優しそうに笑っていました。
母の笑顔を見た叔父が、計画通りに事が運んでいることを、にやりと笑った気がしました。
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