2:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:26:18.22 ID:QxgIwWOp0
それから月日は流れ、私はとてもいい子へと成長しました。
塾に通い、母が望んだ私立の中学に見事入学を果たしました。
合格が決まった日、母は「おめでとう乃々、あなたは私の自慢の娘よ」と私を抱きしめました。
3:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:31:24.29 ID:QxgIwWOp0
中学一年の夏でした。
移動教室から戻るときに、私はスカートの裾がほつれていることに気づきました。
すぐに近くの女子トイレに入り、ポーチから小さなハサミを取り出して、糸を切りました。
4:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:35:37.36 ID:QxgIwWOp0
嵐が静まったのを確認してから、私は、私の心が震えていることに気づきました。
身体は熱く、息が苦しい。
何度も深呼吸を繰り返し、鍵に手をかけるのですが、なかなか扉を開けられない。
5:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:38:28.12 ID:QxgIwWOp0
始業のチャイムがなり、先生が現れました。現代文の授業でした。
先生はチョークをこんこんと鳴らしながら、黒板に教科書の文章を書いていきました。
私は黒板のその文字をノートに書き写していきます。
6:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:41:26.09 ID:QxgIwWOp0
振り返って、彼女たちの顔を確かめたい。そんな衝動に駆られました。
しかし私の理性と恐怖が、金縛りのように身体を締め付け、私はまさに蛇に睨まれた蛙のようになっていました。
ここで振り向いたら、それこそ私は、変な人だと笑われてしまう。本当に笑われていたらどうしよう。
7:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:45:00.22 ID:QxgIwWOp0
目を覚ますと、白の天井。周りはカーテンに覆われていました。私は保健室に運ばれたようでした。
恐る恐るカーテンを引き、ベッドから出ると、先生と母が私に気づいて駆け寄ってきました。
熱を測り、風邪の症状チェックのようなものもされましたが、
8:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:48:07.15 ID:QxgIwWOp0
その日から私は「いい子」ではなくなってしまいました。
正確には、いい子でありたいと願っていたのですが、いい子であることを保つことが出来なくなりました。
私は常に、人の視線に怯えるようになりました。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:50:20.66 ID:QxgIwWOp0
『常に人に見られていると思って行動しなさい』
放課後の帰り道、一人、歩いていると、誰かが後ろからつけてきている。振り返ると、誰もいません。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:51:41.06 ID:QxgIwWOp0
私はどんどんひねくれた子供になっていきました。
それはクラスメイトの三人の心が伝染したのか、人間としての本質的な黒さだったのかはわかりません。
私は人と目を合わせることが出来なくなり、人の発言や行動の奥を疑うようになりました。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/01/23(火) 18:52:15.05 ID:QxgIwWOp0
しかしながら皮肉なことに、このひねくれた性格こそが、
私の、人に対する不安や恐怖への対抗策になることが後々にわかりました。
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