255:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:25:38.31 ID:1qpUpdjR0
瑞樹は、硬い床を靴で叩く。苛ついているように、荒い音が寒空に響く。
瑞樹は楓の隣に立つと、黙って空を見る。
つられて、楓も空を見る。
256:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:26:38.52 ID:1qpUpdjR0
「見た人が、そこに意味を求めてそうなった」
よくできました、と微笑むと、瑞樹は楓の肩をそっと叩く。
「そう。そして、意味を求めることに、悪意はないの」
257:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:28:30.44 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
高垣楓は意を決すると、すぐに事務所の代表の元へと足を運んだ。
執務室で書類と格闘するその人は、半年前に比べると大分老け込んでいた。
258:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:29:17.11 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
翌日、改めて代表の執務室に呼び出されると、そこには男性――高垣楓と恋仲であると噂された男が居た。
彼の傍には担当しているアイドルたちが居た。
皆、不安そうに大人たちを見守っている。
259:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:30:26.67 ID:1qpUpdjR0
「だって、そうでなければおかしい」
「プロデューサーなら、きっと幸せにしてくれる」
「見た目もお似合いだし、大丈夫」
高垣楓には理解できなかった。
260:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:31:10.28 ID:1qpUpdjR0
「よく言ってくれた」
「うんうん、やっぱりプロデューサーはすごいよ!」
「それなら、みんな安心だね」
なのに、この場に居る人間は、高垣楓以外にその言葉を賞賛する。
261:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:32:13.43 ID:1qpUpdjR0
――『ばけもの』は、見ていた。
高垣楓は、理解した。
もう、人々が求めているのは高垣楓の皮を借りた『ばけもの』なのだと。
想像の中で肥大化し、それでいて自分たちの思い通りになる化け物なのだと。
262:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:32:58.98 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
年が明ける前に、高垣楓はアイドルを引退した。
皆、それを予見していたかのように大いに騒ぎ立て、彼女に関連する情報は年明けのお茶の間を散々にかき回す。
263:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:34:12.33 ID:1qpUpdjR0
「ですが」
情けなく追いすがる男を置き去りにし、瑞樹は帰路を急ぐ。
瑞樹の胸に、苦い感情が溢れる。もう少し若ければ、殴り倒していただろう。
264:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:34:47.97 ID:1qpUpdjR0
以上となります。
ありがとうございました。
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