263:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:34:12.33 ID:1qpUpdjR0
「ですが」
情けなく追いすがる男を置き去りにし、瑞樹は帰路を急ぐ。
瑞樹の胸に、苦い感情が溢れる。もう少し若ければ、殴り倒していただろう。
――まだ、『高垣楓』の名は忘れられていなかった。
――まだ、人々は『高垣楓』を幸せにしようとしていた。
曰く、誠実な男に断られ、姿を消した。
曰く、内縁の妻として男を支えている。
人々は口々に言った。
どんな結果であっても、自分たちは『高垣楓』の幸せを祈る、と。
彼らの中で、高垣楓は理解ある人々に囲まれて幸せに過ごしている。
――『ばけもの』は、まだ、居る。
「まったく……これじゃあ、あの子が外に出れるのはまだ先かしら」
帰路を急ぐ。その先には、信じられるのは貴方だけだと告げた、一人の女性が待っている。
了
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