42: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/22(木) 21:12:47.22 ID:5fJjkWjP0
「だったら、信じて待ってあげないとだめ」
「…!」
琴葉はそう言うと、アタシの手を握った。琴葉の言葉にハッとしたアタシは俯いていた顔を上げ、琴葉の顔を見つめた。そこには、アタシを包みこ込むような琴葉の温かい笑顔があった。
43: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/22(木) 21:16:25.99 ID:5fJjkWjP0
アタシが、Pの帰る場所。
「結婚したらその瞬間から、帰る場所は『家』から『家族』になるの。私はそう思う」
44: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/22(木) 21:18:26.22 ID:5fJjkWjP0
一旦ここまで、続きは深夜に投下します。
45:名無しNIPPER[sage]
2017/06/22(木) 22:17:09.58 ID:DRvYc9ys0
乙 待ってた
46: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:09:52.60 ID:nE0G2m1V0
「…っく…ふうぅっ…」
コールはもう十五回目。スピーカーにしてるスマホのコール音がアタシ達三人を煽り、二人も不安の色が隠せなくなってくる。アタシなんて、どんどん涙がせり上がってくる。
二人はそれを振り払うべく、それぞれアタシの片手を握ってくれた。多分、Pは大丈夫だっていう自己暗示も兼ねてるんだと思う。
47: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:11:33.47 ID:nE0G2m1V0
「ぇぐ…P…あの、ねっ…」
琴葉とエレナに背中を擦られながら、少しずつ言葉を絞り出していく。
『ちょっ、落ち着けって!大丈夫か!?ゆっくりでいいから話してくれ。ほら、深呼吸して』
48: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:14:30.76 ID:nE0G2m1V0
『えっ!?いやいや、俺は恵美に『アタシに甘えるな!』って言われてるものとばかり…』
「はぁ…?」
今のアタシにはPの言ってる言葉の意味がわからなくて、頭が一瞬活動停止した。ただそれだけなのに、電話越しなせいかPはアタシが怒ってると思ったらしく、言い訳をまくし立てるように早口で話し始めた。
49: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:17:05.17 ID:nE0G2m1V0
『………で、あの後不安になって『夫 出張中』とかで検索してみたら、その…居ない方が楽だ、とか…俺にとってネガティブな事ばっかり色々書いてあったし、恵美ももしかしたらそうなのかなって。恵美は優しいから我慢してくれるんだろうけど、負担になるくらいだったら寂しさくらい我慢しなきゃと思ってな。俺が甘えてばっかりじゃ、やっぱ夫婦としてダメだから』
……………………っ!!
アタシは色んな気持ちがはち切れそうで、声すら出せなかった。Pの声が聞けた事への安堵、超絶大バカなPへの怒り、そして分かってくれない悲しみ、そして相手を分かってないのはアタシも同じなのに、自分勝手に怒るわがままな自分への激しい嫌悪感。どの感情で涙を流してるのか、自分でも分からなかった。それほどその一つ一つが大きい物だったから。
50: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:18:00.90 ID:nE0G2m1V0
そんなアタシの沈黙をPはどう受け取ったのか最初の勢いはなくなり、声も弱々しくなっていった。
『…自分でも女々しいって事は分かってるよ。恵美がもしかして俺の事を友達、良くて親友くらいにしか思ってないのかな、っていうのは薄々思ってたし…」
51: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:21:29.55 ID:nE0G2m1V0
この言葉にアタシは一瞬自分の方の非も綺麗サッパリ忘れて、完全にキレた。確かにアタシはPの鈍感な所も含めて好きになったし、結婚もした。けど今の言葉だけは、Pを心から愛する妻として許す事ができなかった。そしてドスの効いた声でゆっくりと、
「はぁ?なにそれ。知ったかぶりも大概にしてよ。バカじゃないの」
52: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:25:03.30 ID:nE0G2m1V0
『あ、うん、だよな。ごめ……はぁ!?えぇっ!!?うそっ、嘘だろ…!!?なぁ、今の』
アタシのそんな気持ちなんて全く知らなかったとばかりに驚くPに対しての怒りか、勢いで大音量での愛の告白をしてしまった事に対する照れのどっちのせいかは分からないけど、アタシは顔を真っ赤にしながら畳み掛けるように攻撃を続ける。
「なに驚いてんの!?ありえない、ほんっとサイテーだよ!!男として好きじゃないならPが帰ってきてすぐ玄関にすっ飛んでったりしないし、寒い中ニコニコしながら手を繋いで毎朝そこまで見送りに行ったりしない!何より結婚なんてする訳ないでしょ!!」
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