42: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/22(木) 21:12:47.22 ID:5fJjkWjP0
「だったら、信じて待ってあげないとだめ」
「…!」
琴葉はそう言うと、アタシの手を握った。琴葉の言葉にハッとしたアタシは俯いていた顔を上げ、琴葉の顔を見つめた。そこには、アタシを包みこ込むような琴葉の温かい笑顔があった。
「大丈夫よ。プロデューサーに何かあったならすぐに妻の恵美に連絡が行ってる筈だし、あの超が付くほどの愛妻家が一回電話に出なかったくらいで愛想を尽かす訳ないじゃない」
…確かに、少し考えれば分かる事だった。アタシ、全然周りが見えてなかったみたい。それを聞いていくらか心に立ち込める暗雲が晴れたけど、青空が見えるにはまだまだだった。
「…でも、電話掛かって来ないんだぁ…」
「きっと、何か事情があるだけだよ」
「でも…」
震える声で何とか言葉を返すと、静観していたエレナが尋ねた。
「恵美からは電話したノ?」
「…うぅん。もし出なかったらって思ったら怖くてさ…」
もしアタシがかけて出なかったら完全に望みが絶たれると思って、かけられずにいた。弱音を吐くアタシに、琴葉の表情はまた真剣なものへと変わった。
「…恵美、私は結婚してないから今の恵美の気持ちは分からないけど、あなたの親友として言わせて」
アタシは何を言われるのかと少し緊張しながら、無言で頷く。
「新婚さんだし、恵美はプロデューサーの事が大好きなのはよく知ってるから、寂しいとは思う」
「けどあなたには、その気になれば会える距離に私やエレナ、そして765プロの皆がいる。他のお友達やご近所の方もね。でもプロデューサーは知り合いすら誰も居ない土地で、たった一人でお仕事してるんだよ」
「あ…っ」
琴葉の真っ直ぐな瞳に射竦められて目が逸らせないでいたアタシは、その言葉に追い打ちをかけられた。
「支えられるだけだったあの頃とは違う。恵美は今はもう、あの人を支えてあげなくちゃいけないの。その為には、恵美がもっと強くならなくちゃだめ」
「だって恵美は、あの人の帰る場所なんだから」
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