【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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76: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:07:10.49 ID:Q3fcpmY20
 楽屋の扉を開ける。
 五人はそれぞれに、自分の衣装やメイクの確認をしていた。
 おかしなところのない風景に見えるが、俺はなにか違和感を覚えた。
 順に五人を見る。違和感の正体が判った。茜が大人しくしている。
 茜は楽屋内に置かれた、舞台の様子を確認できるモニターを真剣な眼でじっと見つめて、小さくひらいた口からゆっくりと息をしていた。
以下略 AAS



77: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:09:04.03 ID:Q3fcpmY20
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 客席に流れているBGMが小さく聞こえてくる以外はほとんど音のしない、静かな舞台袖に到着する。
 集合予定時刻まではまだかなりの時間があった。俺たちが一番の到着かと予想していたが、広い舞台袖の中央に、一人の少女がぽつんと立っていた。
 茜たちと同じ衣装を着ている。ということは、スタッフではなくて同じアイドルだ。

以下略 AAS



78: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:11:23.33 ID:Q3fcpmY20
「ぐっもーにーん! えぶりばーでぃー!」

 スタッフやアイドルたちの緊張感とは対照的に、能天気な高い声が響く。
 鼻歌混じりに楽屋口から舞台袖へと入ってきたその声の主は、ショートの金髪碧眼、日本人とフランス人の両親を持つハーフのアイドル、宮本フレデリカだった。
 フレデリカは今回の目玉アイドルの一人だ。飛びぬけて明るく、いつも緊張感とは無縁なフレデリカのキャラクターは、男女を問わず広い世代に親しまれている。
以下略 AAS



79: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:13:21.68 ID:Q3fcpmY20
「プロデューサー……掛け声、ほんとに伝統なんスか?」

 比奈に尋ねられて、俺は首を横に振った。

「やっぱり、そうっスよね……」
以下略 AAS



80: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:15:05.78 ID:Q3fcpmY20
 俺は俺自身に対して困惑した。なにが起こっているのかわからなかった。
 比奈たちユニットのメンバーに囲まれ、待機しているほかのアイドルたちにも囲まれ、俺は茜を目の前にして動くこともできず、喉の奥から細い息だけを漏らしていた。
 どうなっているのかわからないまま、とにかく茜の背に手を添えようと、右手を伸ばしたところで、先に比奈たちが茜に駆け寄る。
 それぞれが茜の手を取り、肩に手を添えた。

以下略 AAS



81: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:17:21.00 ID:Q3fcpmY20
 茜たちとともにバルコニーへ上がるステップをのぼる。
 バルコニーのゲートの向こうからは開演を待つファンたちの熱気が伝わってくる。
 暗幕で区切られたゲートの前に、それぞれのアイドルが立った。
 比奈と春菜は川島瑞樹の両翼に。裕美とほたるは佐久間まゆの両翼だ。
 俺は直前の茜の件を受けて、念のために茜の入場位置付近に待機することにした。茜と美穂は、美嘉の両翼となる。
以下略 AAS



82: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:18:53.01 ID:Q3fcpmY20
「大丈夫っ!」美嘉が二人の頭に手を置く。「今日はうまくいってもいかなくても、アタシたちが主役なんだから、ぜんぶ成功なの! ね!」

 そう言って、美嘉は強い瞳で二人を見る。二人の顔に赤みが戻る。
 城ヶ崎美香。この一瞬で、ファンだけでなく同じアイドルの心までひとつにする。恐るべきカリスマ。

以下略 AAS



83: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:20:15.66 ID:Q3fcpmY20
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 アイドルに憧れ続けていた地元の幼なじみは、高校を卒業すると、すぐに上京して、いくつもの事務所のオーディションに応募していた。
 一方の俺は、地方の大学に通いながら、イベントスタッフのアルバイトなど、芸能関係の仕事を積み重ねていた。
 幼なじみのアイツはアイドルに。俺はそのプロデューサーに。
 高校を卒業するとき、交わしなおした約束に大した拘束力があると思っていたわけではない。
以下略 AAS



84: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:21:51.56 ID:Q3fcpmY20
 俺はモニターを見つめる。
 茜たちは歌い、踊り続けている。
 俺は茜とアイツを同一視していた。だから、これまでもずっと、そして呼ぶべき大切な場面で、その名前が呼べなかった。
 茜とアイツは違う。
 茜がステージに立ち、アイツがたどり着けないところへ茜がたどり着くまで、こんな簡単な事実にすら気づけないなんて。
以下略 AAS



85: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:23:33.96 ID:Q3fcpmY20
「プロデューサー」

 裕美とほたるがこちらに歩いてくる。

「おう、お疲れ様」
以下略 AAS



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