【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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84: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/28(日) 00:21:51.56 ID:Q3fcpmY20
俺はモニターを見つめる。
茜たちは歌い、踊り続けている。
俺は茜とアイツを同一視していた。だから、これまでもずっと、そして呼ぶべき大切な場面で、その名前が呼べなかった。
茜とアイツは違う。
茜がステージに立ち、アイツがたどり着けないところへ茜がたどり着くまで、こんな簡単な事実にすら気づけないなんて。
そんな失礼なことがあるだろうか。
自己嫌悪しながら、それでもモニターを見つめ続けた。
「助けられてるよねぇ」
壮年社員が、モニターを見つめたままつぶやく。
「私たちはアイドルのみんなを支え、輝く手伝いをしている……でもその実、私たちもこれ以上なく助けられているんだ、彼女たちの、輝きに」
「……はい」
「これからも、頑張ってくれよ、プロデューサー」
「……はい」
「頑張ってくださいね、プロデューサーさん」
「……はいっ」
返事をした自分の声は、自分でも驚くほど、素直だった。
モニターの中では、曲が終わったアイドルたちが、きらきら輝く笑顔で客席に手を振っていた。
それを見つめながら、俺は心のなかで別れを告げる。
幼いころの、約束に。
さようなら。俺は、新しい夢を支えに行くよ。
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ライブは続く。
茜、比奈、春菜、裕美、ほたるの五人は中盤のトークコーナーでこれからCDデビュー予定のユニットであることを告知。
茜の天然の熱血ボケと、比奈の冷静なツッコミは会場の笑いを誘った。
春菜、裕美、ほたるの三人はほかのアイドルのプログラムの一部にダンサーとして出演。
そしてプログラム最後の曲と、アンコールまでを無事に終えて、サマーフェスは大盛況のうちに終演となった。
長い時間をかけて客席に向かって深い感謝の礼をし、顔をあげた茜たちアイドルの顔は、みんな晴れやかだった。
「おつかれーっ!」
舞台袖に戻るなり、美嘉の声が出演者みんなをねぎらう。アイドルたちがお互いをねぎらう声があちらこちらで響いていた。
「今日はありがとうございました!」
美穂が美嘉に言う。
「すいませんっ、入りを失敗して迷惑をかけてしまいましたっ! 次はもっと合わせやすい食べ物を掛け声にしますっ!」
茜が美嘉に向かって頭を下げる。食べ物の掛け声はやめるつもりはないらしい。
「おつかれさまー! すっごくよかったと思うよ! 失敗なんて気にするほどじゃないからさー。美穂ちゃんはキュートだったし、茜ちゃんは体力すっごいよね! 二人とも、また絶対一緒にライブやろ!」
言いながら、美嘉はにっと笑って茜に向かって拳を突き出す。
茜は一瞬戸惑ったようだが、すぐに自分の拳を出して美嘉と突き合わせた。
それから、パンと小気味いい音を立ててお互いの手のひらを打った。
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