160: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:17:34.57 ID:GXp8xFqq0
『魔の海を越えて……最後に見たのは…』
イヤフォンを耳に差したまま、呆然と天井を見つめていました。
一通り黒いジャケのアルバムを聴いて…今は、ある曲をリピートしてしまっていて。
それはアルバムのストーリーの冒頭。主人公が敵に撃たれて、戦地から現代へと魂が飛ぶ場面を歌った曲。
161: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:18:43.03 ID:GXp8xFqq0
息を切らして彼の家に辿り着くと、インターホンに手を伸ばしました。
だけどその手を、途中で止めてしまったんです。
きっと堂々と尋ねたら、彼は全てを隠してしまう。
今青葉が知らなきゃいけないのは、そうじゃない顔。
162: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:20:03.92 ID:GXp8xFqq0
『こん…こん…』
自分でもびっくりするぐらい、弱々しいノックをしていました。
それでもあの部屋にはよく響いたのでしょう、彼はすぐに気付いて…。
163: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:20:43.13 ID:GXp8xFqq0
「__……大丈夫だよ。」
164: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:22:10.26 ID:GXp8xFqq0
「………っ!?」
「痛かった?ごめんね……。」
こぼれた血は、あたたかい。
165: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:23:16.59 ID:GXp8xFqq0
今回はここまで。
筆者の中では、青葉はかなり影を隠してそうなイメージがあります。
166: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/07/21(金) 03:58:54.17 ID:lURP6mEEO
膝枕をしてあげる内に、彼は疲れ果てて眠ってしまいました。
今は子供みたいに穏やかに目を閉じていて、その顔が青葉を満たして行く。
少なくともこの鎮守府では、青葉以外誰も知らない顔なのですから。
腕には真新しい噛み跡。まだかさぶたも真っ赤なその傷を見て、ふと彼の血の味が蘇りました。
167: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/07/21(金) 04:00:03.38 ID:lURP6mEEO
「“司令官”、おはよーございます!!」
「ああ、おはよう。“青葉”。」
168: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/07/21(金) 04:00:47.80 ID:lURP6mEEO
「演習ですか…。」
「…ああ。さっき話が来た。」
その夜彼から告げられたのは、演習の知らせでした。
169: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/07/21(金) 04:02:18.08 ID:lURP6mEEO
翌日夜。鎮守府内・射撃場。
かつて拳銃やライフルの訓練用に作られた小さな建物も、今はあまり使われていない。
だが、今でも時折ここで訓練を行う者が、一人だけいた。
170: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/07/21(金) 04:03:10.03 ID:lURP6mEEO
穴の空いた的は、穴の空いた脳天を蘇らせる。
的の白と、血を流す銃創。
それらが混ざり合うと、それは白い制服を汚す血を想像させた。
“胸に三発の弾”
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