青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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170: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/07/21(金) 04:03:10.03 ID:lURP6mEEO
穴の空いた的は、穴の空いた脳天を蘇らせる。
的の白と、血を流す銃創。
それらが混ざり合うと、それは白い制服を汚す血を想像させた。

“胸に三発の弾”

感情を取り戻しつつある今、苦痛の末の死への願望は、決壊したダムのように彼を濁流に飲み込んでいる。
だが、それでも死ねない理由、死への恐怖を抱く理由が彼にはあった。

何よりも愛おしい恋人であり、最も信頼する部下である彼女の存在。
それがたった一つの死ねない理由で、生きる意味。

射撃場の外へ出ると、三日月が浮かんでいた。
手を伸ばしたところで、それは届くはずもない。
月光はただただ、彼の指をすり抜けていた。

「追いかけても追いかけても〜♪

…指の間をすり抜けるバラ色の日々…ね。」

人生とは奇妙だな、と、彼は考えていた。
日頃はあまり吸わないタバコを取り出し、火を点ける。
喉を通るメンソールの冷たさは、夜風の冷たさを一際強く彼の脳に刻み込んでいた。

こんな日は、ぬくもりに触れたい。

その夜恋人にこっそり抜け出してもらい、情事に耽るでもなく、彼はただ彼女を抱きしめ眠った。
これは依存なのだと、彼はどこか冷めた目を自身に向けていて。
彼女はその傾向を感じ、眠る彼を見ては微笑んでいた。

心の奥底にまで沈めるように、深く胸へと彼を抱きしめて。

明後日には、演習が待っている。




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