161: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/06/23(金) 05:18:43.03 ID:GXp8xFqq0
息を切らして彼の家に辿り着くと、インターホンに手を伸ばしました。
だけどその手を、途中で止めてしまったんです。
きっと堂々と尋ねたら、彼は全てを隠してしまう。
今青葉が知らなきゃいけないのは、そうじゃない顔。
“…覗くしかない。
何もなければそれで良し、もし何かあったなら…。”
今は記者として、恋人としての見せ所だ。
記者だからこそ出来る、ともすれば傷を広げかねないような、すれすれの手助け。
でもそんな事、他に誰が出来るの?
やるしかない…青葉、取材しちゃいます……!
壁を這うように、こっそりと裏へ回ります。
寝室の位置は把握してる、それはこのサッシの向こう。
カーテンの隙間からは間接照明が漏れてる…音楽も聴こえる。いるのは間違いない。
バレる事は、微塵も怖くない。そんな余裕自体無くて。
でも心臓の音はばくばくしていて…その正体は、不安でした。
ちゃんと耳をすませば、かち、かち、と、無機質な音が聞こえて来ます。
音を立てないよう、片手スコープを窓の隙間へ。
いました……あれは…!?
青葉、見ちゃいました…。
そこにいたのは。
ベッドの上で何度となく、空の拳銃をこめかみに撃ち続ける彼の姿。
間接照明に口元だけが照らされていて…その頬は、釣り上がっていて。
頬には、涙が伝っていました。
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