313: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:26:06.00 ID:N4f4DzpF0
「飲みたいですねー、紅茶」
わたしとアルパカさんが二人してため息を吐いたときでした。
ピシっ、というラップ音が屋内に響き渡ったのです。割と場数を踏んでいるわたしには、その音が何なのかがわかってしまいました。わたしの耳が確かなら、これは木造建築の断末魔。
314: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:26:46.89 ID:N4f4DzpF0
わたしはヤメタさんとお話していました。覚えていますか? いつか知り合った、ジャガリアンハムスターの彼です。
イタチたちとの凄まじい生存競争を繰り広げていた彼らとの日々。なんでいまこんなことを思い出すのでしょう。わたしにとってはひどい思い出なはずなのに。あの忌々しい……、忌々しい、妖精さんが作ったあの道具のせいで、わたしは……。
315: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:27:51.53 ID:N4f4DzpF0
気が付くと、砂山に埋もれているようでした。おかげで何も見えません。
「んんん!?」
もぞもぞと動きますと、上に突き出た手が空を切ります。それを頼りに、私は砂山から脱出できました。
316: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:31:48.53 ID:N4f4DzpF0
上を見上げると、ちょうど私たちが振ってきたのだろう四角い穴がぽっかり空いていました。天井は高く、穴からここまでも10メートルはありそう。我ながらよく助かったものです。
天井にはクレーンが設置されており、壁にもいくつか大きな穴が開いています。おそらく製造された茶葉をここに運び込み、あのカフェをはじめとした各施設に分配、配送を行っていたのでしょう。
「さて……、どうやってここから出ましょうか」
317: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:33:10.39 ID:N4f4DzpF0
ザク、ザク、という音がどこからか聞こえてきました。その一定のリズムには、なんだか聞き覚えがあります。そう、これは大群が行進しているときにそっくりです。
アルパカさんも気が付いたようです。
「う〜ん、足音?」
318: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:34:26.15 ID:N4f4DzpF0
『……ガガガ、セ』
「せ?」
『セルリアンを確認。排除シマス。排除シマス』
319: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:35:18.37 ID:N4f4DzpF0
「う〜ん、セルリアンの気配はしないけどねぇ」
「たぶん故障かなにかですかね?」
「こしょー?」
320: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:37:03.00 ID:N4f4DzpF0
「トキぃ!」
「大丈夫? アルパカ」
トキさんは地面すれすれで大きく羽ばたき、抱えていたもう一人のフレンズ――姿を見るにヘラジカでしょうか?――を下ろします。
321: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:37:55.80 ID:N4f4DzpF0
オーロックスさんがわたしを指さしました。
「こいつ、誰ですか?」
「ああ! その子ねぇ、かばんさんとおんなじフレンズなんだってぇ〜!」
322: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:38:41.35 ID:N4f4DzpF0
「ん?」
みなさんがわたしを取り囲む中、ハシビロコウさんだけが遠巻きにわたしを見つめていました。いや、もうこれは睨んでいました。
「ええと……」
323: ◆Wv.nqe0Jy.[saga]
2017/04/22(土) 19:39:56.30 ID:N4f4DzpF0
凍り付いた空気に脅えるようにあたりをうかがいながら、ハシビロコウさんは続けます。
「ボスは……、アルパカがセルリアンに襲われてるっていってたから。その……、アルパカと一緒にいたあなたが、もしかしたら」
「いやいやいやいや! そんなわけないじゃないですか!」
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