7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:46:39.15 ID:tTAn3URP0
◇◇◇
「おはようございまーす!」
プロダクションに入ると、いつものように元気な挨拶をします。
「あ、卯月、おはよう!」
8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:47:16.64 ID:tTAn3URP0
◇◇◇
違和感は日に日に大きくなっていきました。
毎日レッスンを続けても、どこかしっくりと来ません。
ずれた歯車はかみ合うことなく、その軋みは大きくなるばかり。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:49:38.36 ID:tTAn3URP0
◇◇◇
ステージの裏に、私は呆然と佇んでいました。
ステージの上では、凛ちゃんが歌っている。もう少しで、私の出番になる。
レッスンもたくさんしました。リハーサルだって、上手くいきました。
10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:50:38.03 ID:tTAn3URP0
「……そうか、そうだな」
すると、プロデューサーは私の前に手を差し出します。
「ほら、そんな顔をするな。誰だって調子崩す時はあるだろ……たぶん、初めてなんだろう?」
なら、もう一度やろう。プロデューサーは優しくそう言ってくれます。
「指切り、だ」
11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:52:42.00 ID:tTAn3URP0
◇◇◇
夜道を一人歩いていました。
ライブは無事に終わりました。ボロボロだけど、最低限は上手くできた……そう思っています。
でも、違和感はなくなりません。ボタンをかけ違えたような気持ち悪さは、消えることはありません。
12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:54:55.72 ID:tTAn3URP0
◇◇◇
女子寮の自分の部屋に戻った後も、私の頭は真っ白なままでした。
何かしないといけない。反射的にテレビのリモコンをつかむと、電源を入れます。表示を見ると、ちょうどメディアの再生中でした。
「なに……かな」
13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:55:51.09 ID:tTAn3URP0
◇◇◇
翌日、手紙を頼りに街へ出ます。
明らかに怪しいとは思いました。でも、今の私が頼ることができる情報は、ちひろさんからの手紙だけです。
普段通らない道を進み、見知らぬ街へ出る。そうしてたどり着いた場所は、古びたビルでした。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:58:43.24 ID:tTAn3URP0
人気のないビルの中に入り、階段を上ります。そうして、ちひろさんはとある部屋の前で止まります。
「さあ、どうぞ」
そうして、部屋の扉を開けます。それに吸い込まれるように、私は部屋の中へと入っていきました。
「……」
案内された部屋の中には、誰かがいました。
15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:59:49.79 ID:tTAn3URP0
絞りだした言葉を聞くと、フードの人は諦めたようでした。
「私は――」
そうして、ゆっくりとフードをめくりあげます。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:01:09.36 ID:JSGxJH370
きっと、目の前に居る人が『島村卯月』であるのは本当なんでしょう。
だって、私が『島村卯月』と言うには、あまりにも不出来だから……
今日まで『島村卯月』をやっていた私は、どうしても『島村卯月』になりきれなかった。
それは、私が本物ではなかったから。
「ちひろさん、あとはお願いします」
17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/09(月) 00:02:07.34 ID:JSGxJH370
「でも、今『島村卯月』と言う存在が失われると、社会的に大問題になる」
シンデレラガール、島村卯月。一週間の休養でさえ、大騒ぎだったとプロデューサーさんは言っていました。
もし仮に、突然引退となれば、その影響は計り知れないでしょう。
「だから、ステージに立てなくなったあの子に代わって、あなたが作られた」
無言で、ただ頷きました。
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