14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/01/08(日) 23:58:43.24 ID:tTAn3URP0
人気のないビルの中に入り、階段を上ります。そうして、ちひろさんはとある部屋の前で止まります。
「さあ、どうぞ」
そうして、部屋の扉を開けます。それに吸い込まれるように、私は部屋の中へと入っていきました。
「……」
案内された部屋の中には、誰かがいました。
目元まですっぽりとフードで顔を隠しています。
体つきはいかにも女の子で、ちょうど私と同じくらいの大きさです。
「!?」
その人は、私を見るなり怯えたように肩を大きく震わします。
「……ちひろさん」
小さな声で、咎めるようにつぶやきます。
その声を聞いたとき、私の中の欠けている記憶が騒ぎ出します。
私は、それを知っています。その声を、聴いたことがあります。
「ほら、そんなに深くフードを被っていたら顔が見えませんよ」
「……見せていいんですか?」
フード越しに、その人は私を見ていました。
「……逃げても、いいんですよ?」
問いかけれれた言葉は、拒絶ではなくて優しい声色でした。
「そう、逃げたっていいんんですよ。ここから先にある真実は、『島村卯月』にとって何より残酷なものだから」
ちひろさんは、じっと私を見つめています。
逃げてしまうことは、きっと簡単ななんでしょう。
でも、私にはそれは出来ませんでした。
欠けた記憶のピースはその存在を主張し、私が『島村卯月』であることに疑問を投げつけてくる。
逃げ出してしまえば、『島村卯月』と言う存在は欠けたまま、一つになることはないんです。
「――あなたは、だれですか?」
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