821: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:31:53.84 ID:6D6vTS+OO
右手で左手首を掴み、油の中にいれる。人間の手首を揚げているにもかかわらずジューっという音だけはおいしそうだった。片手での調理ははじめてだったが、揚げ上がりはうまくいった。タレを絡めるとほかの手羽先と見た目はあまり変わらない。
ビニールパックに手首と手羽先を詰め終わったちょうどそのとき、バイク便がやってきた。
822: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:32:52.34 ID:6D6vTS+OO
「あのー」
各階の様子を無線で聴きながら被害状況を整理してきた刑事にのんきな呼びかけがかかった。
823: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:34:01.20 ID:6D6vTS+OO
中野「永井、なんか食べもの持ってねえ?」
永井は考え深げな様子で中野を無視した。
824: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:34:48.41 ID:6D6vTS+OO
永井「前、佐藤さんと記憶が交差したとき、一瞬だけど僕は、動悸が治り汗が引いた……たぶんあのとき、記憶だけじゃなく、精神状態も交差したんです。佐藤に僕の恐怖が伝わり、僕には佐藤の冷静さが……いや、冷静さだけじゃない、高揚感も」
感覚的に理解していたことを言葉にして語り直したとき、佐藤のパーソナリティがくっきりとした輪郭をともなって見えてきたように永井は感じていた。
825: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:36:21.01 ID:6D6vTS+OO
佐藤が案内された工場はメインとなる敷地中央の工場の南側にあり、トタン張りの壁に埃がこびりついた、老朽化した小さな作業場だった。
シャッターを閉め明かりをつけると、天井の照明が目的の機械を照らし出した。その機械は正面シャッターからいちばん奥まった場所に置いてあった。
826: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:37:03.65 ID:6D6vTS+OO
佐藤が破砕機と相対していたとき、フォージ安全の機械室に例の紙袋が届けられた。
紙袋を運んできた作業員が中身を見て、言った。
827: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:39:42.79 ID:6D6vTS+OO
佐藤「亜人は最も大きな肉片を核に再生する」
ビニールパックからごろんと転がり出てきたひときわ大きな塊は、人間の左手首だった。
828: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:40:37.38 ID:6D6vTS+OO
機械音が鳴りわたっている空間に人間の声がかすかに混じったのを永井は聴き取った。
永井「聞こえたか!?」
829: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:41:44.63 ID:6D6vTS+OO
永井「そんなはず……ない……」
永井は否定の言葉を口にしながら、天井パイプからぶら下がって、着地した。
830: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:42:27.79 ID:6D6vTS+OO
永井「佐藤さん、なんでそんな方法……できる……」
佐藤がほんとうに現実に存在しているのか、眼に見えている光景を信じきれない感情が渦巻くまま、永井は茫然と訊いた。
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