824: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:34:48.41 ID:6D6vTS+OO
永井「前、佐藤さんと記憶が交差したとき、一瞬だけど僕は、動悸が治り汗が引いた……たぶんあのとき、記憶だけじゃなく、精神状態も交差したんです。佐藤に僕の恐怖が伝わり、僕には佐藤の冷静さが……いや、冷静さだけじゃない、高揚感も」
感覚的に理解していたことを言葉にして語り直したとき、佐藤のパーソナリティがくっきりとした輪郭をともなって見えてきたように永井は感じていた。
永井「あのひとはこんなガキの一挙手一投足を気に入ってた……理解してくださいなんて、無茶なことは言いません」
そして、永井は確信を込めて言った。
永井「これは、僕と佐藤にしかわからない」
すこしのあいだ、沈黙が流れた。中野はまだ空腹に気を取られていて、唸るように息を吐いた。
戸崎は永井と佐藤のあいだに思った以上につながりがあること、そのつながりを永井が認め、告白した声の調子から永井の感情の機微が感じ取られ、自分でも予想しなかったことだが、そのことに感慨深い気持ちになっていた。
やがて、無線から戸崎の声が聞こえてきた。
『きみはいるべくしてここにいる気がしてきたよ』
永井「迷惑ですね」
すぐに返事をした永井の口調は、いつもと同じできっぱりしていた。
ーー
ーー
ーー
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20