829: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:41:44.63 ID:6D6vTS+OO
永井「そんなはず……ない……」
永井は否定の言葉を口にしながら、天井パイプからぶら下がって、着地した。
着地したさいの膝を曲げたままの姿勢で顔を上げ、通路の先を見る。誰もいない。無人の空間のまま。通路の両端に配置された機械類がゴウンゴウンと作動音を響かせている。単純な文字通り機械的な音の繰り返し。だがその繰り返しは、しだいに人間の声が染み付いたかのような響きへと変貌していた。
それは永井の心象的な音的イメージに過ぎなかったが、機械類がたてる騒音とは別の種類の音を実際に永井は耳にした。
人間の足音。
通路の左側から人影が現れた。
佐藤「あっ、永井君」
永井と佐藤は同時に互いのことを認めた。佐藤は立ち止まって両手を広げ、言った。
佐藤「来ちゃった」
家に突然訪問してきた友人然とした身振り。右手に握ったドライバーから血が滴り落ちる。佐藤は作業用のつなぎとサスペンダー付きの工具ベルトを身につけていた。それらが奪いとったものであることは、染み込んだ血の跡を見れば一目瞭然だった。
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