822: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/03/24(日) 23:32:52.34 ID:6D6vTS+OO
「あのー」
各階の様子を無線で聴きながら被害状況を整理してきた刑事にのんきな呼びかけがかかった。
「配達なんすけど」
「はあ? 何の」
「食べ物っす」
バイク便のドライバーは規制線のテープ越しに刑事に配達物を手渡した。
「サイン貰わないと帰れないんすよ」
刑事が手渡された紙袋を開けると、ビニールパックが入っていて、取り出して確認してみると冷凍された揚げ鳥がパック詰めされていた。
「こんなときに……ここの社員はどうかしてるな」
ビニールパックにはラベルが貼ってあり、「手料理おとどけねっと」という社名が行書体で印刷されていた。ラベルの右上には手書きのスマイルマーク、左下には小さな文字で「“余分な手”を一切加えず、まごころを込めて……」というメッセージが添えられている。
「ちょっと! うちの荷物ですよ」
刑事をエントランスに案内したフォージ安全の社員が駆け寄ってきた。社員ら刑事からの許可も貰わないうちに荷物を掴み取り、紙袋にビニールパックを戻すと連れ立ってきた警備員に手渡した。
「爆発するかもよ」
「警察署より厳重な検査を経て搬入します。ご安心を」
揶揄を嫌味で返された刑事は「けっ」と、ちいさく悪態をついた。
フォージ安全の社員が言ったとおり、配達物は即座にX線検査にかけられた。モニターには揚げ鳥の骨しか映らず、不審なものは何一つ見えなかった。
「異常なし」
警備員のその言葉とともに、紙袋は十階にある機械室へと運ばれていった。
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