785: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:23:37.41 ID:ymR8HEsBO
十五階の業務フロアへと続くドアの前で田中たちは上階と下階からの挟み撃ちに警戒しつつ、奥山がドアのロックの解除するのを待っていた。
田中「奥山、まだ開かないのか?」
786: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:25:13.41 ID:ymR8HEsBO
田中が文句を言った直後、背後からガコンという音がした。三人が階段へ向けていた視線をドアへ戻すと、固く閉ざされていたドアが半開きになっていた。
『ほら、とっと入って』
787: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:26:26.51 ID:ymR8HEsBO
奥山「こっちもあと少しで十五階全体のセキュリティを掌握できるよ」
気を取り直した奥山がハッキングの進捗状況を田中に伝える。
788: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:27:12.37 ID:ymR8HEsBO
奥山「何か、変だぞ」
一方の奥山は違和感に手を止め、思考をフル回転させていた。偶然とは思えないタイミングで無線が通じなくなった。しかし、妨害だとしたらいったいだれが? フォージ安全側の人間である可能性はきわめて低い。セキュリティ・サーバー室は掌握してあるし、妨害が可能なら被害が大きくなる前に行っているはず。第三者の介入? だが、外部にセキュリティ業務が委託された痕跡はなかったはず……
789: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:28:42.14 ID:ymR8HEsBO
奥山「佐藤さん!」
留守番電話センターにつながったが、無視して叫ぶ。
790: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:29:53.72 ID:ymR8HEsBO
李は震えあがっていた。田中が社長室に侵入してきたのを見たとき、李はとっさに立ち上がったが、それ以上は動かなかった。喉は閉塞し、呼吸するのもつらい。眼はずっと見開かれている。田中が強化ガラスのドアの前で立ち止まる。田中と李の眼があった。
田中「久しぶりだな」
791: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:36:07.96 ID:ymR8HEsBO
李「あのときは……ごめんなさい」
顔の横に挙げた両手と唇を震わせながら李が言った。瞳から涙が溢れ落ちた。
792: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:37:14.94 ID:ymR8HEsBO
田中「永井か」
亜人にしか見えないIBM粒子が田中たちを飲み込んだ。並外れた量のIBM粒子を放出した永井は、何食わぬ顔で巨大送風機の前に座ったままだった。永井は無意識に視線をあげ、ふと閉じていた口を開け、つぶやいた。
793: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:38:09.31 ID:ymR8HEsBO
平沢が麻酔銃に換えのダートを装填しているあいだ、背後の若い黒服が高橋に狙いをつけた。
794: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/01/26(土) 22:39:05.48 ID:ymR8HEsBO
「クリア」という声がコイル型イヤホンから聞こえたとき、アナスタシアにはその言葉が何を意味するのかすぐにはわからなかった。少ししてビルに侵入してきた田中たちがやっつけられたのだと思い当たった。
アナスタシアが正解に思い当たったのと同時にスマートフォンがブルブルと振動した。洋式トイレの蓋の上に置いていたのでびっくりするような大きな音が婦人用トイレに鳴り響いた。アナスタシアはビクッと肩を震わせ、そのときの動作によって人感センサーが働き、トイレの照明がパッと光った。
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