新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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215: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:45:24.76 ID:AMJLL1TVO

佐藤は通路の真ん中で拳銃の銃口を天井にむかって真っ直ぐあげていた。天井のスプリンクラーは未作動のものだった。佐藤は拳銃を発砲した。銃弾がスプリンクラーに衝突した。機械が作動し通路に降雨した。星十字の幽霊が膝をついたまま動かなくなった。佐藤が拳銃をレッグホルスターにおさめた。佐藤は動けない幽霊に向かっていった。


佐藤「動きはいいんだけどね」
以下略 AAS



216: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:46:58.57 ID:AMJLL1TVO

屋上に飛び出してきた永井の頬を雨粒が叩いた。研究所は屋上緑化を進めていて、鮮やかな緑色の葉をした植物が植込みの中で存分に生い茂っている。その植物を眺めるのに最適な位置に、ベンチが全部で四脚、通路の上に背中合わせで配置されていて、平らなL字型のルーフがベンチにかぶさり、南側の縁にまっすぐ平行に延びるルーフとつながっている。

永井が肩で息をしながらドアに寄りかかっていると、唸りをあげる風の中から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。声のほうを見やると、マスクの研究員が屋上の縁で手を振って永井を待っている。永井は息を吸い、研究員のほうへかけて行った。

以下略 AAS



217: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:49:55.00 ID:AMJLL1TVO

下をのぞきこむ永井の横顔を見ながら、研究員は永井に話しかけた。


研究員3「きみが外へ出たあと、おれの車でどこかまで送ってもいいよ」
以下略 AAS



218: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:51:44.77 ID:AMJLL1TVO

銃弾が永井の肩に命中した。佐藤が永井と研究員からすこし離れた位置に立っていて、ふたりを拳銃で狙っている。


研究員3「隠れろ!」
以下略 AAS



219: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:53:58.69 ID:AMJLL1TVO

研究員3「ぅ……」

永井「へ!?」

以下略 AAS



220: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:55:23.10 ID:AMJLL1TVO

研究員まで走る。腕を振ると、指を三本切断した右手が視界にはいってくる。


永井 (佐藤さんの刃物、重さを利用して叩き切るから大きな振りかぶりが必須、柱の並んだここなら攻撃しにくいかも)
以下略 AAS



221: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:57:28.62 ID:AMJLL1TVO

警備員用のロッカールームはもう使われることのない部屋になっていて、閉じたられたままのロッカーから警備員たちの服や私物が遺品として家族のもとに返されるのはまだ先のことになりそうだった。だから、レインコートの人物が姿を隠すにはそこはうってつけの場所だった。

彼女は、雨滴を滴らせながらロッカーの隅に身を潜めていた。はじめは埃っぽかったが、黒い幽霊のほうに視覚と聴覚を集中させているあいだは埃っぽさを忘れられた。幽霊とのリンクが途切れると目の前が灰色のスチール板だけになり、レインコートの人物は閉じ込められたのだと錯覚した。彼女はロッカーの隅から飛び出し、息を喘がせた。得体の知れない恐怖は落ち着いたが、焦りの感情が潮位を増していた。黒い幽霊はあと一回発現できる。だが、永井がいる屋上は激しく雨が打っている。監視カメラの死角を縫うように移動してみずから屋上に赴くことも不可能で、レインコートの人物に打つ手はないように思えた(ロッカールームまで来れたのも、佐藤の襲撃によってカメラが破壊されていたためだった)。

以下略 AAS



222: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 22:00:15.93 ID:AMJLL1TVO

雨脚は弱くなっていて、白い筋が消えた画面の中にいるアナウンサーが、研究所で起きた爆発音についてあわただしく説明している。その背後、研究所の屋上の端に動くものがあるのをカメラマンが気づいた。映像がズームする。画質がすこし荒くなる。レインコートの人物は、手術着姿の研究員を抱えているのが美波の弟だということがズームするまえからわかっていた。

レインコートの人物はロッカールームを掛け出てた。電話するみたいにスマートフォンを耳にあて報道を聴いていると、アナウンサーが、屋上の南側です、といっている。研究所の外壁の南側に回る。角を曲がったところで黒い幽霊を発現すると、硬い材質の外壁に星十字が浮かんだ。幽霊は一階と二階のあいだあたりの高さで発現されたが、雨のせいで動きはぎこちなく緩慢だった。肉眼で星の動きを観察しているときのように、星十字型の頭部の位置に変化は見られない。

以下略 AAS



223: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 22:02:48.84 ID:AMJLL1TVO

真っ直ぐ突き出された打撃をかわした黒い幽霊は、佐藤の幽霊が右腕を引き戻す前に爪を立て腕を振るい、右腕を切断した。切断された腕は一瞬だけ宙に静止すると、黒い粒子が結合を図ろうと活性化し、断面の粒子が磁石に引っ張れられる砂鉄のように逆立った。佐藤の幽霊は再結合途中の腕を引き、くっついた瞬間、攻撃後の隙を狙って永井の幽霊の頭に強烈なアッパーカットを打ち上げた。空中の腕が拳を作ったことを見てとっていた永井の幽霊は、スウェーすることでその攻撃をかわした。


永井 (頭を狙ってる?)
以下略 AAS



224: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 22:06:18.60 ID:AMJLL1TVO

真っ黒な無貌が口にした言葉には、何の感情も込められていなかった。それゆえ、永井は自分が実際にその言葉を発したこと、そのときとそれからのことに向き合わざるを得なくなった。


永井「そんな昔のこと、言わないでくれよ……」
以下略 AAS



225: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 22:07:53.64 ID:AMJLL1TVO

永井「でもアンタは助けたい」


屋上の端に到達した。永井は左手で右手首を掴み、研究員の身体を支えながら縁に立った。
以下略 AAS



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