新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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222: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 22:00:15.93 ID:AMJLL1TVO

雨脚は弱くなっていて、白い筋が消えた画面の中にいるアナウンサーが、研究所で起きた爆発音についてあわただしく説明している。その背後、研究所の屋上の端に動くものがあるのをカメラマンが気づいた。映像がズームする。画質がすこし荒くなる。レインコートの人物は、手術着姿の研究員を抱えているのが美波の弟だということがズームするまえからわかっていた。

レインコートの人物はロッカールームを掛け出てた。電話するみたいにスマートフォンを耳にあて報道を聴いていると、アナウンサーが、屋上の南側です、といっている。研究所の外壁の南側に回る。角を曲がったところで黒い幽霊を発現すると、硬い材質の外壁に星十字が浮かんだ。幽霊は一階と二階のあいだあたりの高さで発現されたが、雨のせいで動きはぎこちなく緩慢だった。肉眼で星の動きを観察しているときのように、星十字型の頭部の位置に変化は見られない。

はやく、はやく、はやくーーと、レインコートの人物は黒い幽霊への命令を心のなかで唱えていたが、黒い幽霊の動きは遅く、レインコートの人物は命令を実際に言葉にして口に出すまでになってしまっていた。星十字の幽霊の動きが目にみえて良くなったとき、フードが弾く雨音は、研究所に侵入する前に林の中で様子を伺っていたときと比べればほとんど無音といってもいいほど弱まっていた。壁をよじ登る幽霊の動きを追って、レインコートの人物は頭をあげた。顔にちいさい雨滴があたったがまばたきはしなかった。彼女の眼は、もうすぐ屋上に到達する自分の幽霊とともに、縁に立ち研究員を抱える永井が、後ろを振り返り、緊迫から解放されたようになにかに気を取られている様子を見ていた。


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