新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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215: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/05/16(火) 21:45:24.76 ID:AMJLL1TVO

佐藤は通路の真ん中で拳銃の銃口を天井にむかって真っ直ぐあげていた。天井のスプリンクラーは未作動のものだった。佐藤は拳銃を発砲した。銃弾がスプリンクラーに衝突した。機械が作動し通路に降雨した。星十字の幽霊が膝をついたまま動かなくなった。佐藤が拳銃をレッグホルスターにおさめた。佐藤は動けない幽霊に向かっていった。


佐藤「動きはいいんだけどね」


レインコートの人物は佐藤の声を聞いた。その声には、多少の失望感が混じっているように聞こえた。


佐藤「人を殺せるようになったら、またおいで」


佐藤は星十字の幽霊に背を向けて、階段をのぼっていった。佐藤の姿が曲がり角に消えると、通路に座り込んでいる幽霊の頭部が崩れ始めた。レインコートの人物は、いまさっきの出来事が現実だと信じられない気持ちで混乱していた。佐藤が黒い幽霊に生身で対応したことも驚愕だったが、いちばんの衝撃は、佐藤がのこした最後の言葉だった。言葉が伝える内容ではなく、佐藤が語る言葉の響きが、帽子の男が殺人者だと、研究所の人びとを殺して殺して殺しまくってきた殺人者だと、レインコートの人物に確信させた。

階段をのぼる足音が散水の音に混じって反響して、星十字の幽霊まで届いた。レインコートの人物の聴覚はその反響を、理解が届かない存在が現実に存在する証拠として、認識の主体である彼女に冷酷に教え、提示していた。


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