169: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/22(木) 02:16:03.06 ID:IxHqraCLo
「――私とギルが前衛、シエルは後方射撃、ナナはまず近接射撃で間合いを計って」
「初期位置からの移行タイミングは各自、臨機応変に……開幕はシエルに任せるよ」
「了解しました」
170: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/22(木) 02:19:09.99 ID:IxHqraCLo
一連の攻撃が煩わしいのか、虎型は苛立たしげに息を荒げ、全身に青白い雷を纏う。
私達は瞬時に飛び退き、直後に発生した、虎型の周囲を覆う電磁場から身を逃れた。
これを隙と見たアラガミは後方へ大きく飛びあがり、背部のマント状の器官を展開させる。
扇状に広がったマントと頭部の間には雷球が生成され、軽やかな宙返りと共に、それは放たれた。
171: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/22(木) 02:22:40.46 ID:IxHqraCLo
この調子だ。
このままいけば、誰も傷つくことなく、任務を終える事ができる。
そんな私の慢心を即座に打ち砕くかのように、オペレーターからの報せが届く。
172: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/28(水) 01:18:26.45 ID:3YDezVExo
◇
『……このままでは、アラガミの合流は避けられませんね』
173: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/28(水) 01:23:45.69 ID:3YDezVExo
ギルの言葉で、あの日の記憶が想起される。
私が手を伸ばさなかったばかりに、彼は手の届かない場所へ行ってしまった。
結果だけを見れば、仕方のない事だったのかもしれない。
どうしようもない事だったのかもしれない。
174: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/10/28(水) 01:28:50.30 ID:3YDezVExo
「……そろそろだな」
ギルに応じ、"ブラッド"は付近の建造物の、その壁沿いに寄り集まった。
この先に、討伐目標がいる。
175:名無しNIPPER[sage]
2015/10/28(水) 04:29:51.27 ID:Y0PJK7K10
隊長が心配になる…でも隊長かわいいよ隊長
176: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/11/22(日) 02:03:21.70 ID:+my5+5nCo
顔を失ったもう一体もそれに呼応し、展開したマントから雷球を生成する。
狙いもなく、単調に放たれるそれだけなら、まず当たることはないけど、相手は2体だ。
相手を定められる視覚を持った虎型が、その強靭な四肢を躍動させ、私に迫る。
右からは雷球、左からは質量攻撃。
177: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/11/22(日) 02:05:23.75 ID:+my5+5nCo
これは他の刀身パーツにも対応している機構で、例としては槍型のオラクル気流や、槌型のブースト機動といったものがある。
しかし、短剣型にはその設計思想のために、そうした機構を搭載できるだけの余剰スペースがない。
なので、移動用に割り切ったものとして、短剣型は神機から発生する"オラクル細胞"を用い、大気中に小さな壁を生成する。
この壁は一つの行動に一回しか生成できない代わり、神機使いの脚力に一度は耐え、空中での移動を可能とする。
178: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/11/22(日) 02:07:25.61 ID:+my5+5nCo
無数の"オラクル細胞"で構成されたアラガミを律する、捕喰行動という名の本能。
その、偏食傾向に拠らない上辺を刺激し、誘発させるのが、先ほど私に投与されたフェロモン物質だ。
ナナの"血の力"ほどの効力はなくとも、これで一定時間アラガミを引き付けることはできる。
私が細胞自体に刺激を与える囮となったことで、無貌の視覚のハンデを解消させてしまったのは痛いけど、
179: ◆6QfWz14LJM[saga]
2015/11/22(日) 02:12:39.96 ID:+my5+5nCo
"血の力"もしくは、それから派生した戦闘技術、"ブラッドアーツ"の発現には、"新型"神機使いの起こす"感応現象"が密接に関わっている。
以前も触れたけど、"感応現象"は体内の"オラクル細胞"が脳神経と結合し、"偏食場"と同種の脳波を発現させるという現象だ。
"偏食場"を発生させるということは、神機使いの体質がよりアラガミに近づくという事であり、
また、神機を制御する人工細胞の容れ物でしかなかった人間の肉体が、細胞を受容し、自発的にオラクルを伴った機能を発するまでに至ったという事でもある。
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