70:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:35:49.71 ID:wGLpvSsUO
夜が明け、また朝が来る。起床したステラは顔を洗い寝癖を手櫛で整える。
朝から最悪な気分だ。何度同じ悪夢を見ればいいのやら。ステラは不機嫌な表情で歯を磨く。
毎度毎度性懲りも無く首を刈られに来ないでほしい。その過程で否応無しに負傷するのだが、当時感じた痛みがそのまま来るのだ。バチクソに痛くて発狂したくなる。
ただでさえ故郷が燃やされる悪夢を見ているのに、追加で悪夢を増やすのは勘弁してほしい。本当に。
呪(まじな)いの類は散々試したが効果は一切無し。施術者曰く、これは本人の精神面の問題なのでこれ以上の関与は不可能だそうだ。つまり、どうしようもないということだ。
71:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:36:31.73 ID:kwfTTyKEO
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72:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:37:36.69 ID:kwfTTyKEO
「うおーっ!!!本物だぁ!!!!!」
「なんでS級冒険者が鍛冶屋なんてやろうとしてんだろ」
「さあ?金なんて死ぬほどあるだろうし暇潰しなんじゃない?」
「英雄の考えてることはわかんねーな」
「先日は邪魔が入りましたが今度こそ!私とけっコケーッッッ!?!???」
73:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:38:19.76 ID:nMQ3Byb3O
ステラは落胆のため息を吐き、店に戻ろうとする。どうせ大半が興味本位で来ただけだとは思ったが、まさか全員がこれとは。
有名になるのもいい事ばかりじゃないと改めて思わされた。いっそ顔と名前を変えてしまうか。
「いやちょっとお待ちなさい!せっかく勇気を出してここまで来たのに無視を決め込むのは失礼ではありません!?まさか、麗しき私(わたくし)の美貌が目に入らなかったとでも言いますの!?」
74:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:39:54.42 ID:815JB7LXO
「つ、つまらない物ですが、どうぞ」
「お気遣いありがとうございます」
「い、いただきますぅ…」
75:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:40:35.01 ID:815JB7LXO
「で、では…。私たちが採用されないような余程のことって、なんですか…?」
おずおずと手を挙げそんな質問をしてきたのは、身体が小さければ気も小さい、内気な少女【モニカ】だった。
彼女の書類を読むのには苦労した。なんせ、ぐにゃぐにゃとした汚い筆跡な上に無駄に小さな文字であれこれ書かれていたのだから、解読に苦労するのは当たり前の話だ。
彼女が記載した来歴を鵜呑みにするなら、独学で文字の読み書きを覚えたのだと推測できる。頑張った方だと褒めてやりたいくらいだ。
76:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:41:57.47 ID:815JB7LXO
さて。それでは楽しい面談の始まりである。ステラは手始めに志望動機を尋ねた。正直に答えた方が高ポイントだとも伝えてある。
「恥ずかしながら私、少々世間知らずのきらいがありまして。人の上に立つ者として見聞を広めてくるよう父より言われたのです。そこで、まずは市井の者と同じ暮らしをして彼らと同じ目線に立つべきだと考えました。しかし、私は庶民の皆様のような雑務などはしたことがなく…。途方に暮れている私の前に【実務経験一切不要】、【未経験者大歓迎】と書かれたチラシがあったのでこれ幸いと思い志願いたしました」
嘘はいけません、とステラはにこやかに両断した。サンドラの凛々しい顔が固まる。
77:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:42:53.34 ID:815JB7LXO
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78:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:43:49.61 ID:6DqWzYS7O
「ひゃ、ひゃいっ!」
緊張しているのかモニカの声は裏返っていた。しかも何故か立ち上がった。別に立つ必要など微塵も無いのだが。サンドラも座っていた。
一瞬座ってもらうか考えるも、そっとしておいた方が面白そうなのでステラは放っておくことにした。
79:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:44:44.86 ID:ejBGnolxO
「…えっと。わ、私は遠く離れた山を縄張りにした盗賊団で、先述した通り雑用をしていたんですが…その。盗賊団が解散しちゃって、一人になったんです。物心が付く前からその盗賊団にお世話になってたので、頼れる人はいなくて…。薬草や鉱石を売って、なんとか今までやってきたんですけど…。一人でずっとやっていくのは、その、心細いから。助けてほしいなって思って、応募しました。…ご、ごめんなさい。下っ端とはいえ、盗賊風情が生意気というか、偉そうですよね。こんな私が、誰かの助けを得て生きようだなんて…」
別にそんなことはないだろう。物心が付く前に拾われたということは、彼女は捨て子、或いは何らかの事件や事故に巻き込まれて両親が死んだのだと想像がつく。
そんな天涯孤独の身となったモニカを紆余曲折あって盗賊団が拾い、雑用を押し付けていた。
彼女個人でどうにかできる範囲を遥かに超えている。どこでアクションを起こしても、当時の状況を脱することは不可能だっただろう。
80:名無しNIPPER[saga]
2024/03/03(日) 15:46:05.34 ID:uTYKGY6cO
「…むう。この私を無視して盛り上がるなんていいご身分ですわね」
ステラがモニカに構うばっかりに放置されているサンドラはむくれていた。意外と愉快な一面があるようだ。
構い終わったステラは気を取り直して、サンドラの志望動機を訊くことにする。別に黙秘されても構わないが、理由が単純に気になるのだ。
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