藤原肇「千夜さん、一緒に釣りに行きませんか?」
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67:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:35:12.55 ID:/ZuqsV3u0
「これまでも、似たようなことがあったの」
東京に戻ると、公演の成功に沸く、事務所スタッフの皆さん。
68:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:38:37.20 ID:/ZuqsV3u0
「千夜さんには……引き取られた黒埼家に捨てられたくない、という焦燥が……?」
「うーん、そういうのはたぶん、無いかなぁ」
夕暮れ時の事務所のラウンジで、私の隣に座るちとせさんは、ボンヤリと頭を振りました。
69:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:42:30.64 ID:/ZuqsV3u0
千夜さんの部屋には、物がほとんど無いそうです。
欲しいものが無いから、自分のための買い物もしない。
主たるちとせさん以外の何物にも興味を示さず、何も求めず、ただ主のためだけに尽くす日々。
70:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:44:11.06 ID:/ZuqsV3u0
その日のうちに私は、Pさんに相談しました。
「難しい問題だな……」
Pさんは腕組みをしながら椅子の背にギィッともたれ、悩ましげに息をつきます。
71:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:46:04.69 ID:/ZuqsV3u0
本来、私が悔しがる筋合いなど、無いのかも知れません。
ともすれば、私が今行おうとしている事は、余計なお節介である以上に、一方的な価値観の押しつけでもあるのでしょう。
「いえ……たとえアイドルでなかろうと、私は……私には」
72:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:47:19.50 ID:/ZuqsV3u0
「責任重大だな、うーむ……」
Pさんは顎に手を当て、天井を見上げながら思案を始めます。
やがて、何かを思いついたかのように、もう一度、一つ頷きました。
73:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:53:20.75 ID:/ZuqsV3u0
「足……車のこと、ですか? い、いえ」
私は手を振りました。
「車が無くても、電車とバスを乗り継げば、目的のポイントまで行くことはできます。
74:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:55:28.10 ID:/ZuqsV3u0
――――――
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75:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:57:25.74 ID:/ZuqsV3u0
『ボーッと釣り糸を垂らす時間を、空虚だと言うつもりなんて無い』
『でも、空白を恐れるという千夜の価値観に、変化を与える外力には、なり得るんじゃないかな』
76:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:58:51.72 ID:/ZuqsV3u0
「ですが、アイドルになり、屋敷を出て寮に住むようになってからは、そんな事も無くなりました。
寮の部屋は、屋敷ほど大きくないですし」
千夜さんは、あくまでも淡泊に言葉を続けます。
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