藤原肇「千夜さん、一緒に釣りに行きませんか?」
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67:名無しNIPPER
2021/10/30(土) 15:35:12.55 ID:/ZuqsV3u0
「これまでも、似たようなことがあったの」
東京に戻ると、公演の成功に沸く、事務所スタッフの皆さん。
そんな賑やかな雰囲気から少し離れ、私はちとせさんと、二人きりで話す機会を得ました。
「誰かと何かを分かち合う、っていう感覚を、あの子は必要としていない。
義務や使命でしか、千夜ちゃんは他者へ与える事ができない。
私への誕生日プレゼントだって、「何が欲しいですか」って……ふふっ」
ちとせさんの表情は、笑ってはいたものの、とても寂しそうでした。
「私は何も要らないよ、って、千夜ちゃんにはいつも言うの。
するとね……本当に何も、“モノ”は無い。
その代わり、普段以上にもの凄く丁寧に、身の回りの世話をしてくれるの。
髪の毛一つ落ちないくらい、入念に掃除をしたり、何時間もかけて夕食の支度をしてくれたり……。
あの子なりに、その日を特別にしたいっていう気持ちはあっても……それ以外の方法が、分からないんだと思う」
ご両親を亡くされ、ちとせさんの家に引き取られてからの千夜さんは、黒埼家の従者として生活していたとのことです。
ちとせさんはその日々を、“呪い”と称しました。
「私があの子を縛りつけたの。
そうでもしないと、闇に沈んでいっちゃいそうだったから……だけど」
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