【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/07(土) 23:59:11.98 ID:H/R4DuwY0
白い毛並みが走る姿を遠くから眺めている。
それがとても誇らしく、同時にとてもつらい。
懸命に走るマックイーンの姿に、大事な誰かを重ねていることだけは自分でもわかる。しかし、それが誰なのかまでは思い出せない。ただ直感でわかることは全てを思い出したその時、自分はもうここには居られないだろう。何となくだが、ネズミはそんな予感がしていた。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:00:13.48 ID:OS/CCdyu0
「俺はな。ここに来る前は多分お前と同じくレースに関わっていたんだと思う。まだ記憶はおぼろげなんだが、どうも体は覚えているみてぇなんだよ。お前の走る姿を見ていると居ても立っても居られないっつーか、ふつふつと湧き上がる熱いものを感じるっつーかよ。お前の言う通り、俺はお前の走る姿に誰かを重ねているらしい。そいつのことを未だに思い出せないってのが心苦しいがな」
「その方はわたくしに似ていますの?」
「いや、多分お前とは真逆だな。ブサイクで、お前さんほど品も良くねぇし、どうしようもねぇくらいドンくさい奴だった気がする。でもそいつはお前に負けないくらいすげー根性の持ち主だった。居並ぶ強豪に囲まれても一歩も退くことなく、色んな奴らの想いをその小さな体に背負って緑の上を懸命に走っていた。それを俺はすぐ近くで見ていた。そう、丁度お前の頭の上に乗っている今みてーにな」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:01:19.89 ID:OS/CCdyu0
ネズミを頭の上に乗せたまま、マックイーンが再びスタート位置についたところで二人分の大声が響く。ネズミにとっては初めて見るウマ娘だが、マックイーンには昼休みぶり。声の主はダイワスカーレットとウオッカだった。
「あなたたち。どうしてここが?」
「ゴールドシップからよ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:02:48.94 ID:OS/CCdyu0
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:03:43.93 ID:OS/CCdyu0
一方的な条件を提出してきた二人のチームメイト。随分と乱暴な物言いに聞こえるかも知れない。しかし、マックイーンはその言葉の裏にある二人の優しさ、そして真意をしかと理解していた。
もしも二人がマックイーンの体のことだけを心配していたのであれば、条件提示などせずにトレーナーかメジロ家に密告すれば良い。しかし、二人はそれをせずに勝負という形に持っていったのはマックイーンの気持ちが痛いほど理解出来るからこそ。ならばこそ、そこにもはや言葉は不要。走りで語るのみ。ウマ娘らしくレースで引導を渡すのがせめてもの情けであると考えたからである。また、1600mのマイル距離はダイワスカーレット、ウオッカの脚質に適している。つまり、ライバルとして本気でぶつかるという覚悟と意思の表れであると共にマックイーンの足への負担を考え、敢えてそう長くない距離を選んだのだ。
「ふふっ、本当にわたくしは幸せものですわね。こんなにも想ってくれる仲間に囲まれているんですもの」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:04:30.50 ID:OS/CCdyu0
左回りのコースでまず先に前へ出たのはダイワスカーレット。それを追う形でマックイーン、ウオッカが続いている。風を受けてたなびくツインテールが実にうっとうしい。すかさずマックイーンは大外を狙い右側へと抜けようとした。しかし、背後から向けられた凄まじいプレッシャーがマックイーンの追い抜きを止めた。
後方を横目で確認すると、すぐ斜め後ろには殺気めいた視線と闘気を放っているウオッカがいた。マックイーンはこれに似た感覚を知っている。春の天皇賞にて自身の連覇を阻んだライスシャワーが仕掛けてきたものと非常によく似た走法。しかし、プレッシャーの質そのものはまるで違っていた。ライスシャワーが放っていたものは息が詰まりそうなほど凄まじい重圧だったのに対して、今のウオッカが放つプレッシャーはまるで鋭利なナイフ。背筋をぞくりとさせるほどの冷たささえ感じる威圧は隙を見せた瞬間に背後から刺されるのではないかと錯覚するほど研ぎ澄まされていた。
先行するダイワスカーレットも、背後のマックイーンを絶対に前へ行かせまいと意識を耐えずこちらへと向けているのがわかる。この二人は確実に自分を仕留めるための走りをしている。普段いがみ合っている二人とは思えないほど、見事なまでのコンビネーション走法。加えて、マイル距離ということもありじっくりと打開策を見出す時間さえ与えてもらえない。マックイーンは焦りがまるで毒のように思考を蝕んでいくのを感じていた。
39
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:05:15.33 ID:OS/CCdyu0
「随分苦しそうじゃねーか、たれ子」
不意に耳元で声が聞こえた。その時、今の自分は一人で走っているのではなかったということを思い出した。
「なに迷ってやがるんだ。今ここで行かねーと負けちまうぞ」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:06:02.38 ID:OS/CCdyu0
「あの二人は間違いなくお前が動くのを待ってやがる。中途半端な仕掛けじゃまず刈り取られるだろうよ」
(そろそろ後ろの二人も仕掛けてくる頃ね。でも絶対に行かせない!)
(マックイーンが仕掛ける瞬間を狙って、一気に差す!)
以下略
AAS
41
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:07:05.74 ID:OS/CCdyu0
マックイーンは意を決して負傷している足にぐっと力を入れた。その瞬間、左足に凄まじい痛みが走る。苦痛に顔を歪めるマックイーンだが、その足の痛みは頭上のネズミによってすぐに消し去られる事となる。
「来るわよ、ウオッカ!」
「おうよ! 絶対に行かせねぇ!」
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:07:57.94 ID:OS/CCdyu0
突如、足の痛みを帳消しにしても余りあるほどの凄まじい痛みがマックイーンの頭天から足の先まで全身へと一気に駆け巡る。その瞬間マックイーンの思考は停止し、まるで痛みから逃げるように無我夢中で走った。無意識にかけていた自制のリミッターが、ネズミの噛みつきにより外されたのだ。
普段のマックイーンからは想像もつかないほどの素っ頓狂な絶叫と共に見せた渾身のラストスパート。ダイワスカーレットとウオッカが驚愕したのは、何よりもその速さ。
これが繋靭帯炎を発症した者の走りだと誰が信じるだろうか。そのキレ、力強さはまさしく在りし日のマックイーンそのもの。否、或いはそれ以上。あまりにも衝撃的な展開にやや混乱気味ではあるが、ただ一つ言える確かなことは徹底的にマークしていたはずのマックイーンが自分たちの包囲網を突破して遥か先へ独走しているという事実だった。
以下略
AAS
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◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:08:56.61 ID:OS/CCdyu0
チームメイトである二人との対決から二週間が経った。
一人と一匹の二人三脚により、マックイーンの走りは全盛期のそれに戻りつつあった。足を踏み込む度に走っていた激痛はもう無い。すっかり慣れたコースを走りながらその時≠ェ近いことをマックイーンは悟っていた。
「よぉ、そろそろ時間だせ。たれ子」
以下略
AAS
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