【ウマ娘】小さなトレーナーと白い奇跡【みどりのマキバオー 】
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34: ◆Nsqe9nXw7g
2021/08/08(日) 00:00:13.48 ID:OS/CCdyu0
「俺はな。ここに来る前は多分お前と同じくレースに関わっていたんだと思う。まだ記憶はおぼろげなんだが、どうも体は覚えているみてぇなんだよ。お前の走る姿を見ていると居ても立っても居られないっつーか、ふつふつと湧き上がる熱いものを感じるっつーかよ。お前の言う通り、俺はお前の走る姿に誰かを重ねているらしい。そいつのことを未だに思い出せないってのが心苦しいがな」

「その方はわたくしに似ていますの?」

「いや、多分お前とは真逆だな。ブサイクで、お前さんほど品も良くねぇし、どうしようもねぇくらいドンくさい奴だった気がする。でもそいつはお前に負けないくらいすげー根性の持ち主だった。居並ぶ強豪に囲まれても一歩も退くことなく、色んな奴らの想いをその小さな体に背負って緑の上を懸命に走っていた。それを俺はすぐ近くで見ていた。そう、丁度お前の頭の上に乗っている今みてーにな」

 ネズミはふと自分の手に目をやる。すると、手が透け始めていることに気づいた。不確かだった記憶が形を成していくつれて徐々に自分の存在が消え始めていることの証明。ネズミは、自分に残されている時間はあと僅かであると悟った。

「ネズミさん?」

「あ、あぁ、まぁ、要するに今話したことが全部本当かどうかは俺にもわからねぇってコトさ。すまねぇな、こんなくだらねぇ話でトレーニングを中断しちまってよ」

「いいえ。ネズミさんの話はきっと全て本当の事ですわ。現にこの数日トレーニングに付き合ってくださいましたが、あなたの指示やアドバイスは全て理に適っていました。共に走っているかのような安心感や一体感がありましたわ。それこそ、まるで熟練のトレーナーが側にいてくれているかのような。本当にレースに関わっている者でなければこうはいきません」

「へっ、よせやい。褒めても俺様のトレーニングは優しくならねーぞ?」

「寧ろ望むところですわ。では、次の一本はこのまま走りましょう。そうすれば、何か思い出すかも知れませんわ」

「「ちょーっと待ったー!!」」


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