1:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:03:54.33 ID:2kLflUvfO
目が覚めたら、世界の終わりを願う。
それが僕の日課だった。
地震が全てを崩してしまいますように。
隕石が地球をぶっ壊してくれますように。
ミサイルがこの国を焼き尽くしますように。
殺人的な伝染病が世界中に流行りますように。
大怪獣が何もかもを薙ぎ払ってくれますように。
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2:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:08:02.47 ID:2kLflUvfO
こんなことを考え始めたのはいつだったかな。
手を変え品を変え、僕はいろんな終わり方を願ってきた。
最近ではもうすっかりネタが尽きてしまって、
とっくにあらゆる世界の終わりを願ったように思ってたんだ。
3:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:10:38.89 ID:2kLflUvfO
***
真っ暗なスーパーの中で、僕は舌打ちをした。
4:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:15:08.76 ID:2kLflUvfO
一通り売り場を回る。
取り残された野菜や果物は黒くなり、
甘いような酸っぱいような得も言われぬ臭いを放っていて、、
僕は吐きそうになる。
5:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:17:27.89 ID:2kLflUvfO
外へ出る。
出口の横に立てかけておいた、
自分のクロスバイクにまたがる。
6:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:22:14.11 ID:2kLflUvfO
***
この天使化現象ってやつがいったいなんなのか。
7:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:26:12.60 ID:2kLflUvfO
店員のいない本屋から手あたり次第に漫画をかっぱらって、
自室に引きこもって、僕は漫画をひたすら読んだ。
親が飯だと呼ぶとき以外、ほとんど部屋の外にも出なくなった。
8:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:29:04.76 ID:2kLflUvfO
両親は二人とも口数が少なく、
思い出せる限り、温かな家族団らんってものを味わった記憶は僕にはなくて、
夫婦仲は険悪なのだとすら思っていた。
9:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:32:19.58 ID:2kLflUvfO
***
ペダルを回しながら、
10:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:38:03.30 ID:2kLflUvfO
ゆっくりとブレーキをかけ、僕は自転車を止めた。
いったい何が聞こえたのかと首をかしげ、
音の正体を探ろうと息をひそめた。
11:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:42:03.19 ID:2kLflUvfO
いくつかの交差点を通り過ぎて、
僕はほどなくその場所に辿り着いた。
12:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:45:31.12 ID:2kLflUvfO
彼女が歌うその姿は、一見するだけじゃあ
なんとも絵になりそうな綺麗な光景だった。
一見はね。
13:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:48:15.47 ID:2kLflUvfO
ギターの音色は途切れ途切れ、怪しい音がすぐ混入して、
歌の音程はすぐどっかに飛んで行ってしまいそうで、
まるでなんだか、死にかけた野良犬のうめき声みたいな演奏だった。
14:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:49:43.72 ID:2kLflUvfO
「何か用かい?」と、彼女は僕に尋ねた。
「路上ライブに感動でもしてくれたのかな」
そんなわけないだろ、と僕は思った。
15:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:52:35.47 ID:2kLflUvfO
「そうだ、強盗だ」
「あ、本当に強盗だったんだ」
16:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:54:43.15 ID:2kLflUvfO
「なんというか、まあ下策だね」
笑いながら彼女は言った。
「このご時世に、刺すだの殺すだのなんてさ」
17:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:56:10.63 ID:2kLflUvfO
彼女はゆっくりと歩いた。
僕は自転車を押してその後に続いた。
二人分の足音と自転車の車輪が回る音が、
夕暮れの無人の街に、やけに大きく響いた。
18:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 22:58:20.82 ID:2kLflUvfO
英語は苦手だったけれど、
冒頭の歌詞だけははっきり聞き取れた。
“バイバイ、ミス・アメリカンパイ”
19:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:01:08.28 ID:2kLflUvfO
***
十数分ほど歩き、暗くなる前に到着したのは似たような家が建ちならぶ住宅街で、
20:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:03:33.01 ID:2kLflUvfO
ギターを適当に床に転がして、彼女は僕の方を見た。
「お腹減ってるんだよね。なんか作ろうか?」
21:名無しNIPPER[saga]
2021/02/27(土) 23:08:46.73 ID:2kLflUvfO
調理にそう時間はかからず、僕が待ちくたびれる前に彼女は料理を完成させた。
ダイニングテーブルに配膳されたのはシンプルな山盛りの牛丼で、
呼ばれて席に着くや否や、僕は一も二もなくがっついた。
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