53:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:43:59.94 ID:FQVp12gN0
「……本当は少し、あなたを警戒していました」
胸襟を開く空気に思えた。いや、今ならもう少しだけ話せるかもしれないと、そんな気分になったプロデューサー。いささか踏み込んだ言葉だったかもとは思ったが、しかしエージェントは気にする様子でもなく。
「それは当然ですよね。わかりますよ。……今はいいんですか?」
「ここまでのプロデュース、否定をすることなく見守っていてくださったんです。たとえ立場がどうあれ感謝ですし、今度は僕が信じる限りですよ」
54:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:44:43.96 ID:FQVp12gN0
拍手と歓声の鳴り止まないステージ上で、皆で挨拶。
キラキラとした舞台から観客席を、そしてその向こうを、広がる世界を眺めるライラ。
《生きていくために大切なことは二つ。受け入れる柔軟さと、揺るぎない想い。その両方なの》
母の言葉を思い出す。もっともっと、世界を知って。たくさんのことを受け入れられるようになりたい。そして、揺るぎない想いも、伝えていきたい。自らの言葉で。
55:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:45:36.28 ID:FQVp12gN0
「素敵だったわね、千夏さん」
「ええ、ほんとうに」
観客席。今日のステージを一緒に見に来ていた千夏と千秋。拍手が鳴り止むまでそっとしていた千夏が、ようやく腰をあげた。
「さ、行きましょうか」
56:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:46:17.04 ID:FQVp12gN0
* * * * *
無事閉幕。片付けを終えて、同日夜。
57:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:46:52.18 ID:FQVp12gN0
* * * * *
58:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:47:46.86 ID:FQVp12gN0
「プロデューサー殿」
ライラは叫ぶ。今一度。小さく、だけど確かな声で。
それは夏だから。そして、それこそが彼女だから。
「わたくしは……わたくしは、わたくしの物語のシェヘラザードになれるでしょうか」
59:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:48:33.77 ID:FQVp12gN0
しばしの逡巡。ドキドキを隠せないまま、だけどライラは再び口を開いた。
「…………アイドルは皆をとりこにするもの、と教わりました」
「そうだね、キラキラした姿で魅了する存在だからね」
「それはプロデューサー殿にも、でしょうか」
60:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:49:19.07 ID:FQVp12gN0
跋
61:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:50:32.31 ID:FQVp12gN0
以上です。
ありがとうございました。
62:名無しNIPPER[sage]
2020/11/08(日) 23:12:42.46 ID:o+Qn7rpWo
乙
63:名無しNIPPER[sage]
2020/11/14(土) 00:20:50.25 ID:dpCOad66o
力作乙
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