133: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:33:54.19 ID:CC20O+KU0
「なんかお待たせして、ごめんなさい」
「いいですいいです。気にしないで」
彼女の笑顔に救われる。昨日より心が動いていることに、私はふと気付いた。
134: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:34:39.47 ID:CC20O+KU0
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
私は足を引きずりつつ、ちひろさんをリビングへ案内した。
135: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:35:34.02 ID:CC20O+KU0
「楓さん。お夕飯どうします?」
「あ。ええ、そうですねえ……あまり食欲もないので」
「食べないのは、いけませんよ?」
「……そうですね。じゃあ、軽いものをなにか」
136: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:36:07.09 ID:CC20O+KU0
足を引きずり、寝室へ。どうにか寝間着に着替え、私は睡眠薬を取り出す。
ふと、思う。
これをいっぱい飲んだら、目覚めなくなるのかしら。
137: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:37:39.80 ID:CC20O+KU0
その言葉どおり、朝は来た。リビングに行ってみると、ちひろさんがすでに朝食の準備をしている。
「あ。おはようございます」
138: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:38:12.84 ID:CC20O+KU0
「高垣さん、おはようございます。お体、いかがですか?」
「ええ、おとといよりはだいぶましになりましたけど」
社長さんの問いかけに私は素直に答える。
139: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:38:53.30 ID:CC20O+KU0
「それと、その後の対応についても、いろいろお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」
「いえ、いいんです。それが私たちの仕事です」
私の謝罪に、社長さんは事もなげに言った。
140: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:39:29.05 ID:CC20O+KU0
社長さんはそう言ってくれたものの、事故を起こしたアイドルへの風当たりは、間違いなくきついものだろう。
しかし私には、それを説明できる言葉を持たない。なぜなら。
私にも、よく分からないのだから。
ただ人前に出るには、若干の猶予をいただいたのだ。それを無碍にするわけにはいかない。
141: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:40:10.41 ID:CC20O+KU0
翌日。
クリニックを受診することになった。今日は、ちひろさんも一緒に。
「私もまだお世話になってますから。ちょうどいいです」
142: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:40:46.34 ID:CC20O+KU0
うつむいた顔を上げる。私は、先生の言ったことがよく理解できてない。
「なに、を」
「診断書も書きます。高垣さん。お仕事を休まれたほうが」
143: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:41:14.24 ID:CC20O+KU0
私が、私でなくなってしまう。
そんな焦燥が私を包み込んだ。
「高垣さん。今高垣さんに必要なのは、完全な休息です。ゆっくり療養される、その時間が必要なんです」
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