夜叉神天衣「……気が済むまで、踊ってあげる」名人「それは楽しみだ」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 20:42:06.33 ID:WY8AjuAdO
その人はある日突然、なんの前触れもなく、ふらりと私の眼前に現れた。

「っ……!?」
「ん? ああ、君はたしか竜王の……」
「ど、どうも……」

何故この人がここに居るのか。
その理由は簡単で、対局があるからだ。
関東在住のタイトルホルダーの対局は千駄ヶ谷の将棋会館で組まれる。

しかし、対局時間まではまだ時間がある筈。

「実は腕時計が進んでいたみたいでね」
「そう、ですか……」

機械式の腕時計を手首から外して、スーツのポケットに仕舞うその所作に見惚れる。
まさしく、見るものを惑わせる『マジック』を幾度も生み出した"神"の指先。

「おや? この局面は……」

その人は将棋盤を見つめて気づいたらしい。
私が今並べているのが、先生と彼が繰り広げた竜王戦第一局における中盤の仕掛けであることを。

「見ての通り早く来すぎてしまったので、もしも君さえ差し支えがなければ……」
「あ、はい……よ、よろしくお願いします」

対面に彼が座る。竜王の宿敵、『名人』が。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 20:46:36.48 ID:WY8AjuAdO
「あの……名人」
「ん? なんだい?」

中盤の混沌とした局面を一切棋譜を見ることなく進行していく名人になんとか応じながら、私は我ながら馬鹿馬鹿しい問いかけをしてしまった。

以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 20:50:38.42 ID:WY8AjuAdO
「君は日頃からこの将棋の研究を?」
「は、はい…… 暇さえあれば」
「素晴らしい。流石は竜王の弟子だね」

はて。一体私は今、何を褒められたのか。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 20:54:42.08 ID:WY8AjuAdO
「くっ……!?」

一手。また一手。私の研究が否定される。
それは当然の結果であり、必然とも言える。
名人は先程、この一局は研究の価値があると言っていた。彼も変化を研究しているのだ。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 20:58:21.05 ID:WY8AjuAdO
「ま、参り、まし……」

悔しい。悔しくて、涙が止まらない。
自分の研究を否定されたからではない。
あの竜王戦第一局において、八一が勝利する勝ち筋を名人に示せなかったことが悔しい。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 21:02:53.86 ID:WY8AjuAdO
「天衣、ちょっと待ってろ」

私が思わず微笑んでしまったのを見て、八一は師匠として何やら思うところがあったらしく引き返し、駒音高く盤上に一手を放った。

「ほう……この手は……」
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 21:05:53.15 ID:WY8AjuAdO
「ふん。弟子にちょっかい出されて嫉妬するくらいならもっと早く現れなさいよ」
「無茶言うなよ。俺にも仕事があって……」
「そんなことはどうでもいいのよ。それよりもこの責任、どう取ってくれるつもり?」

逆ギレして、私は名人にも負けて劣らぬ"竜王の指先"を問題の箇所へと導いて触らせた。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 21:07:12.38 ID:WY8AjuAdO
「ありがとな、天衣」
「な、なによ、いきなり……」
「俺の為に名人に一矢報いようとしてくれたんだろ? 詰めは甘いが、見事な研究だった」

私は素直じゃないけど、やっぱり子供で。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage]
2020/08/10(月) 21:18:45.62 ID:/cBBBRbuo
おつ
この子は原作でもお漏らしっ子なのかな


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