夜叉神天衣「……気が済むまで、踊ってあげる」名人「それは楽しみだ」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/08/10(月) 20:46:36.48 ID:WY8AjuAdO
「あの……名人」
「ん? なんだい?」

中盤の混沌とした局面を一切棋譜を見ることなく進行していく名人になんとか応じながら、私は我ながら馬鹿馬鹿しい問いかけをしてしまった。

「私の先生とのこの一番、ずっと覚えていらっしゃったのですか?」
「もちろん。何度もこうして並べているからね。しっかり長期記憶に焼き付けてあるよ」

当然のようにそう返答されて赤面する。
当代の名人に対して棋譜を覚えているかなど、よくそんな失礼な質問が出来たものだ。
しかし、最終的に師匠である八一が防衛を果たしたにせよ、第三局までは名人が勝ち星を重ねていた。

特にこの第一局は名人の完勝譜で、八一の大局観を木っ端微塵に打ち砕いたものだった。

八一からしてみれば屈辱の極みであり、名人からしてみればこの程度かと言わんばかりの勝ちっぷりだったので、負けた側はともかく、勝った側には印象に残らないのではないかと思っていたのだが。

「竜王戦は七番でひとつの勝負だからね」
「あっ……はい」

言われてその常識が身に染みる。七番勝負。
とはいえそれはタイトル戦、もしくは挑戦者決定戦に登場した数少ない限られた者にしかわからない、番勝負における心構えである。


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