69:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:34:46.71 ID:W5lmC8VA0
促されるまま、彼女の後をついていくと、頂上へ着くのはあっという間だった。
うえきちゃんの顔の横、大きな葉っぱの上に二人並んで座り、眼前に広がる街並みを眺める。
あれ?
70:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:37:09.99 ID:W5lmC8VA0
そうだ――藍子ちゃんが言っていたんだ。
相手を嫌な思いにさせてやろうなどとは微塵も考えない、346プロの中でも有数の気ぃ遣い屋さんなのだと。
71:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:39:14.66 ID:W5lmC8VA0
「……ううん。とっても楽しかったよ」
夢の世界とはいえ、まさかこの私が、幼少時代に聞いたおとぎ話の追体験をするなんて。
「でも、こんなに高いと、さすがにキリンの首も届かないかも知れないね」
72:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:42:21.08 ID:W5lmC8VA0
「……あはっ♪」
この子はなんて楽しい視野を持っているんだろう。
そして、私と同じ世界を見ていると、言ってくれもした。
73:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:43:21.01 ID:W5lmC8VA0
「ちとせさん……」
――――。
74:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:45:14.49 ID:W5lmC8VA0
「……魔法使い」
首を横に倒すと、部屋の隅に置かれた丸椅子に、魔法使いが足を組んで座っていた。
75:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:47:09.62 ID:W5lmC8VA0
「…………」
藍子ちゃんは、何も言わなかった。
私の額にそっと手をやり、口をギュッとつぐんで、今にも泣き出しそうだった。
76:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:52:56.96 ID:W5lmC8VA0
私は藍子ちゃんの方を見つめた。
これは、この子に返してあげるべき言葉だと思ったから。
「ちとせさん……?」
77:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:57:20.82 ID:W5lmC8VA0
そう――。
覚悟はしていたつもりでも、やっぱり、残念だなぁ。
「ねぇ、魔法使いさん」
78:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:59:12.29 ID:W5lmC8VA0
「ぷふっ。ククク……!」
藍子ちゃんの膝の上で、私の頭がヒクヒクと揺れる。
それに呼応するように、さっきまで大泣きしていた藍子ちゃんまでもが、今度は嬉し泣きに変わっていた。
79:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 20:03:18.65 ID:W5lmC8VA0
一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍が、かの星であった。
戦後、旅客機の登場により、誰もがみな空を旅することができる時代が到来して、幾年月が経ってからのこと。
人の夢はついに空を越え、月にだって届いたのだ。
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