黒埼ちとせ「進化論」
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77:名無しNIPPER[saga]
2020/06/26(金) 19:57:20.82 ID:W5lmC8VA0
 そう――。
 覚悟はしていたつもりでも、やっぱり、残念だなぁ。


「ねぇ、魔法使いさん」

 丸椅子の上の彼に、私は声をかけた。
 いつぞやの事務所に迷い込んだあの子が、最後の助けを求めたように。

「アイドル、続けたかったとしても、私……負けちゃったんだね」

「あぁ……困った事になった」


 どういうわけか、魔法使いさんは白々しく肩をすくめた。

「もし、オーディションにお前が合格したら、お前はアイドルを続ける……そういう約束だった」

「うん…………え?」


「オーディションに負けてしまった場合については、何も決め事を作っていなかった。
 困ったな……約束をしていない以上、お前の好きにさせてやるしかないじゃないか」


 私は、呆然と彼を見つめている。

「もしお前がどんな判断をするとしても、俺にはそれを否定する事なんてできやしない。
 あぁ困ったなぁ、どうしたものだろう」



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