13:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:44:02.30 ID:O0jAO63X0
エミリー「ですが、私の国の言葉は日本のみなさんにとっては未知の言語……わからない言葉を話すのは失礼ではありませんか?」
育「そんなことないよ。わからないから知りたいって思えるんだ。拙者はもっと知りたいよ。エミリー殿のこと、英吉利のこと、西洋の医学のこと……」
エミリー「育吾郎さま……」
14:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:44:47.18 ID:O0jAO63X0
――それから数日後
エミリー(村に滞在させていただくわけですから、お仕事もしっかりこなさなくては)
15:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:45:13.65 ID:O0jAO63X0
育「まったく……。エミリー殿、大丈夫?」
エミリー「はい。大丈夫です。お心遣いありがとうございます。けれど、少しびっくりしてしまいました」
育「ごめんね。あの子たちには拙者がきっちり言い聞かせるから」
16:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:45:50.39 ID:O0jAO63X0
――翌日
村人たち「おお、あの異人の娘さん、木下さんちの畑を手伝っているのかい」ジロジロ
17:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:46:23.07 ID:O0jAO63X0
ひなた「……そのとおりだよ。農家の、それも女の子が、お侍さんを指導されている先生に剣の稽古をつけてもらえるなんて、とっても珍しいことだよぉ。あたしが頼み込んだんさ」
エミリー(ひなたさん……? なんだか寂しそうなお顔をされたような)
ひなた「エミリーちゃん、ちょっこし長い話になるけど、いいかなぁ?」
18:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:46:59.89 ID:O0jAO63X0
ひなた「村の裏手にあるあの山――芙美台山っていうんだけど、そこには昔から、蘇芳童子っていう女の子の姿をした鬼が棲んでるんだ」
エミリー「鬼……ですか? それは言い伝えなどではなく?」
ひなた「その鬼はね、10年に一度腹を空かせて山を下りてきて、美里恩村に住む男の子を一人さらって食べてしまうんだわ」
19:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:47:36.52 ID:O0jAO63X0
ひなた「その水で染めた布は、貴族に愛好される蘇芳って染め物に負けんくらいの綺麗な生地に仕上がって、とっても高く売れるんだよ」
ひなた「だからその49日間は、村人総出で機を織って染め物をするんだ。そして次の10年後までそれを少しずつ売って食いつないでいく……そうやってこの村は今日までやってきたんだって」
エミリー「そんな……では、村に実りをもたらすために鬼に生贄を捧げているのも同然ではないですか」
20:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:48:12.04 ID:O0jAO63X0
育「……そっか。ひなた殿から鬼の話を聞いたんだね」
エミリー「はい。とても恐ろしく、理不尽なことだと感じました。それにひなたさんは、お兄さんを……」
育「そうだね。10年前、ひなた殿の兄上は鬼に喰われて亡くなられた。拙者はまだ生まれていなかったけど、そのときの出来事はひなた殿や村の長老たちから聞いているよ」
21:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:48:43.76 ID:O0jAO63X0
――村はずれの丘
育「この花なんだ」
22:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:49:15.52 ID:O0jAO63X0
エミリー「私もそう思います。もし私に育吾郎さまの夢を叶えるために何かお力添えができるなら、とっても嬉しいです」
育「夢……そうだね。そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとうエミリー殿。でも拙者の夢は、この村のことだけじゃないんだ」
育「この国は今、一部の異国としか交流しない政策をとっている。そうすることで余計な争い事を避けることができているのも確かだ」
23:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:50:00.79 ID:O0jAO63X0
村の子どもA「うぇぇぇん……」
村の子どもB「いやだあああ! 放してえええええ!!!」
桃子「フンッ……小便臭い小童どもが。好きなだけ喚くがいい」
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