18:名無しNIPPER[saga]
2020/03/29(日) 16:46:59.89 ID:O0jAO63X0
ひなた「村の裏手にあるあの山――芙美台山っていうんだけど、そこには昔から、蘇芳童子っていう女の子の姿をした鬼が棲んでるんだ」
エミリー「鬼……ですか? それは言い伝えなどではなく?」
ひなた「その鬼はね、10年に一度腹を空かせて山を下りてきて、美里恩村に住む男の子を一人さらって食べてしまうんだわ」
エミリー「なんて恐ろしい……まさか、ひなたさんのお兄さんはその鬼に――」
ひなた「うん。鬼に喰われちまったんだわ」
ひなた「……エミリーちゃんは、武家屋敷の近くにある蔵のことを知っているかい?」
エミリー「ええ。とても立派な建物でしたが、育吾郎さまのお父さまはもちろん、他の武家の方のお屋敷のものではないようですね?」
ひなた「そう。あの蔵はねぇ、村人みんなのもの。この村を支えるたった一つの名産品、染め物を貯蔵するための蔵なんだ」
エミリー「なんと、染め物! そういえば先日城下で商人の方々が話されているのを耳にしたのですが、この村の赤い染め物は逸品だとおっしゃっていましたね」
ひなた「そう、真っ赤な染め物……芙美台山の麓には三角池っていう池があってね。鬼が村の子どもを喰らった年は、それから49日間だけ池の水が赤く染まるんだ」
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